ノースロンドンを拠点とするトッテナム・ホットスパーが、今夏の移籍市場において大きな決断を下す可能性が高まっている。クラブの象徴として長年スパーズを牽引してきた韓国代表FWソン・フンミンが、退団を視野に入れているとの報道が浮上。
さらに、その後継者としてバイエルン・ミュンヘンの若きアタッカーで、トッテナムに半年間レンタル移籍をしていた20歳FWマティス・テルの獲得に動いていると、独『Abendzeitung』が報じている。
スパーズの最前線で輝きを放ってきた32歳のエースは、2023年にハリー・ケインがチームを離れて以降、攻撃陣の中心として期待されてきた。だが近年、チームの成績不振やアンジェ・ポステコグルー監督の解任といったクラブ全体の混乱も相まって、ソン本人の将来に関する憶測が強まっている。
現時点でサウジアラビアからの関心が報じられており、クラブ内部でも彼の放出を一つの「世代交代の一環」として捉える動きがあるようだ。
これに対し、クラブ会長のダニエル・レヴィは水面下で後継者探しを進行中。焦点は、今季バイエルン・ミュンヘンで出場機会に恵まれなかったフランスU-21代表FWマティス・テルに向いている。
若干20歳のテルは、ポテンシャルこそ申し分ないが、プレミアリーグでの実績は乏しく、今季スパーズでのローン期間中も目立った活躍は見られなかった。リーグ戦20試合に出場し、わずか3ゴール1アシストという数字は、11ゴール11アシストをマークしたソンの貢献度と比べると大きく見劣りする。
それでも、レヴィ会長が彼の将来性に懸ける背景には、新指揮官候補として名前が挙がっているトーマス・フランクの存在がある。ブレントフォードを率いて独自の育成力と戦術眼を発揮してきたフランクは、テルのポテンシャルを引き出す適任者と見なされている。
バイエルン・ミュンヘンとの交渉も始まったとされ、すでに具体的な買い取りオプション付きでの再レンタル案が取り沙汰されている。テルにとっては、新天地でキャリアを再構築する好機であり、トッテナムにとっては世代交代の象徴的な一手となるかもしれない。
一方で、クラブ内外からはソンの放出に対する懸念の声も根強い。ピッチ内だけでなく、アジア市場を含むグローバルなブランド戦略においても重要な存在である彼の退団は、マーケティング面でも大きな損失を意味する。
とはいえ、クラブが中長期的なビジョンを描くのであれば、若き才能に賭ける決断も不可避なのかもしれない。テルがノースロンドンの新たな顔となれるかどうかは、新シーズンの鍵を握る要素の一つとなるだろう。
トッテナムの夏は、変革と挑戦の幕開けとなりそうだ。ソン・フンミンという時代の終わりと、新たな才能の台頭。その先にある未来が、成功か失敗かを決めるのは、今この瞬間の選択にかかっている。