サマーウィンドウの開幕とともに、イングランド国内ではまたしても移籍市場を巡る思惑が飛び交っている。そんな中、プレミアリーグ各クラブの間で今最も注目を集めているのが、ミルウォールの守備の要ジェイフェス・タンガンガだ。
かつてトッテナムに所属していたタンガンガは、昨夏にフリートランスファーでミルウォールに加入。今季は43試合に出場して2ゴールを挙げるなど、攻守両面で絶大な存在感を放った。その活躍ぶりはクラブ内外から高く評価され、今シーズンのクラブ年間最優秀選手と選手選出年間最優秀選手をW受賞。名実ともにチャンピオンシップ屈指のセンターバックへと成長を遂げている。
そのタンガンガの契約には、わずか120万ポンドという控えめなリリース条項が含まれており、これが市場の関心を一気に加速させた。サンダーランドやリーズ・ユナイテッド、バーンリーといったクラブが熱視線を送る中、ロンドンを拠点とするクリスタル・パレスもまた、このお買い得な逸材に強い関心を示している。
クリスタル・パレスがタンガンガ獲得に本腰を入れるには、ひとつ大きな条件がある。それが、チームのキャプテンを務めるマルク・グエイの売却だ。
グエイにはチェルシーやニューカッスル・ユナイテッドなど複数のビッグクラブが関心を寄せており、契約も残り1年を切った状況。退団の可能性は日増しに高まっている。クラブとしてもその事態に備え、スポルティングCPに所属するウスマヌ・ディオマンデをリストアップ。しかし、彼の移籍金は約4500万ポンドに達する見通しで、財政面での障壁は決して小さくない。
それだけに、120万ポンドで確保できるタンガンガの存在は、まさにユニークな市場機会と捉えられている。グエイを売却し、ディオマンデの獲得に失敗した場合の代替案としても、タンガンガは現実的な選択肢と言えるだろう。
タンガンガ本人も、今月末までに自身の将来を決定したい意向を示しており、獲得を希望するクラブは早急な動きを迫られている。チャンピオンシップからステップアップを望む彼にとって、プレミアリーグの舞台で継続的にプレーできる環境は最も重要な条件のひとつ。その点で、リーグ12位フィニッシュながらFAカップを制したクリスタル・パレスは、格好の選択肢となり得る。
今夏、シュルップやウォードといったベテラン勢を放出し、チェルシーからのローン組ベン・チルウェルもクラブを離れた。さらには、タイリック・ミッチェルやジャン=フィリップ・マテタにも他クラブの関心が報じられる中、パレスにとって戦力の再構築は急務だ。
若き実力者ジェイフェス・タンガンガを格安で手中に収められるかどうかは、今夏の補強戦略における重要なピースとなる。マルク・グエイの去就とともに、パレスのディフェンスラインを巡る駆け引きは、今後数週間にわたりプレミアリーグの注目トピックとして追われ続けることになりそうだ。