新監督招聘の動きが加速する中、北ロンドンのクラブが新たな野心を燃やしている。プレミアリーグの強豪トッテナム・ホットスパーは、ブレントフォードの指揮官トーマス・フランクを来季の新監督候補として招集する。
そして、そのフランク体制の要となる存在として注目を集めているのが、ブレントフォードの中盤を支えるデンマーク代表MFクリスティアン・ノアゴール。指揮官との信頼関係は厚く、新天地でも共に戦いたいという思いが両者にあるとされている。しかし、トッテナムによる理想的な補強シナリオは、予想以上に険しい道を辿る可能性が出てきた。
2019年にブレントフォードへ加入して以降、公式戦196試合に出場したクリスティアン・ノアゴールは、トーマス・フランク監督の下で唯一無二の存在となった。中盤の底で相手の攻撃を遮断し、的確なビルドアップで攻撃の起点にもなるそのプレースタイルは、まさに戦術の“接着剤”と称されるゆえんだ。
守備能力のみならず、ゲームを読むインテリジェンスや冷静な判断力にも優れ、ピッチ上での司令塔として機能してきた。加えて、ロッカールームではリーダーシップを発揮し、チームの精神的支柱としての役割も担っている。
一方で、ブレントフォードは今年3月にノアゴールと2年の契約延長を締結。これにより、トッテナムが獲得に動いたとしても、その交渉は簡単なものではなくなっている。クラブは彼の放出に否定的で、退団の可能性は非常に低いと伝えられており、選手自身にも残留の意思があるともされる。
それでもフランク監督の存在が、ノアゴールにとっても新たな挑戦の機会となることは間違いない。熟知する戦術の下、チャンピオンズリーグの舞台で戦うチャンスは、キャリア晩年に差しかかる彼にとって魅力的に映るはずだ。
トッテナムにとって、中盤の補強は今夏の最優先事項だ。昨季はイヴ・ビスマのパフォーマンスが安定せず、指揮官交代の中でその役割に疑問符が付けられたままとなっている。クラブはビスマへの売却オファーを検討しているとも伝えられ、新体制でのナンバー “6” 探しは急務だ。
その理想形として、ノアゴールの名前が浮上するのは必然と言える。しかし、ブレントフォードとの契約延長に加え、仮に移籍を容認するとしても、クラブは高額な移籍金を要求すると見られている。31歳という年齢を踏まえると、トッテナムがその要求に応じるかは不透明だ。
さらに、エヴァートンやフルハム、ボーンマスなど複数クラブがノアゴールの状況を注目しており、獲得レースとなれば移籍金の高騰は避けられない。フランク監督にとって理想の補強であったとしても、クラブ経営陣がリスクと判断すれば、交渉は難航することが予想される。
加えて、フランク監督はノアゴールのみならず、ブレントフォードで指導したFWブライアン・ムベウモにも関心を寄せていると報じられる。ムベウモは現在、マンチェスター・ユナイテッド移籍の噂が加熱しているが、もしトッテナムが本格的に獲得に乗り出せば、状況は一変する可能性もある。
トッテナムは来季、チャンピオンズリーグ復帰を控え、大型補強が避けられない中で、チームを短期間で形にする必要がある。その鍵を握るのは、指揮官の戦術を理解し、リーダーシップを取れる選手の存在だ。ノアゴールはその条件をすべて満たしているが、現実的には厳しい道のりが待ち構えている。