レンジャーズで躍動するモロッコ代表FWハムザ・イガマネに対し、プレミアリーグとリーグ・アンの複数クラブが獲得に動いている。アイブロックスに到着してわずか1年で、スコットランドの新星は欧州移籍市場の主役に躍り出た。
2024年夏、ハムザ・イガマネは約170万ポンドという安価な移籍金でレンジャーズに加入。シーズン開幕から安定したパフォーマンスを見せ、スコティッシュ・プレミアシップでは16ゴール3アシストと、数字でも実力を証明している。特に3月のセルティックとの大一番での決勝ゴールは、ファンの記憶に強烈な印象を残した。
スピード、足元の技術、決定力を兼ね備え、複数のポジションを器用にこなせるモダンなストライカーとして評価されており、すでにモロッコA代表にも名を連ねている。若干22歳という年齢を考えれば、さらなる成長も十分に期待できる存在だ。
一方で、昨季の成績についてはリーグ戦33試合12得点と、爆発的とは言い難い面も。一部では「好選手ではあるが、飛び抜けた存在ではない」との評価も囁かれている。それでも各国スカウト陣の注目度は高く、イガマネの未来がスコットランドの枠を超えていることは間違いない。
イガマネを巡る争奪戦の中心には、エバートン、ブレントフォード、ウェストハムの3クラブがいる。エバートンはカルバート=ルーウィンやブロヤの退団が濃厚となっており、新たな点取り屋の補強は不可避。
過去にもネイサン・パターソンらをレンジャーズから迎え入れた実績があり、両クラブ間の関係性も良好だ。現レンジャーズのディレクターであり、元エバートン幹部のケビン・セルウェルの存在も、移籍交渉においては無視できない要素だろう。
ブレントフォードは、ムベウモの退団とトーマス・フランク監督の退団がチーム編成に影響を与えており、攻撃陣の再構築が急務。ヨアネ・ウィッサ1人では心許なく、イガマネのようなポリバレントなアタッカーの補強が理想的と見られている。
ウェストハムも新ストライカーの獲得を今夏の最優先課題としており、イガマネのほかにフランスのサンテティエンヌに所属するルーカス・スタッシンにも注目している。
一方、リーグ・アンからもリール、RCランス、ストラスブール、スタッド・レンヌといったクラブが水面下で動きを見せており、フランス国内でも評価は高まる一方。ジョナサン・デイヴィッドの移籍が迫るリールや、前線の補強を急ぐランスにとっては、イガマネのフィット感は抜群との声もある。
移籍金は2000万ポンドか…レンジャーズは売却に慎重な構え
レンジャーズは5月末にクラブの買収が完了し、アンドリュー・カベナグと49ersエンタープライズから2000万ポンドの追加投資を受けたことで、短期的な財政難には陥っていない。そのため、無理にイガマネを売却する必要はないというスタンスを取っている。
とはいえ、レンジャーズのビジネスモデルは、若手有望株を安く仕入れて高額で売却することが根幹にある。イガマネもその枠組みに合致する選手であり、関係者の間では「2000万ポンド以上のオファーであれば、売却を検討するだろう」との見方が強い。
すでに複数クラブが移籍金+アドオンでの契約提示を準備しているとされ、レンジャーズ側も交渉の主導権を握る構え。5年契約を結んでいるイガマネの契約状況も、クラブ側の立場を強固にする材料となっている。
現時点では本人もレンジャーズでの生活に満足しているとされるが、欧州5大リーグからの具体的なオファーが届けば、野心に満ちた若者が新天地を求める可能性は十分にある。
レンジャーズはすでに今夏の補強に向けて準備を進めており、ラッセル・マーティン監督も新たなストライカー獲得に向けた動きを加速させている。イガマネの売却が現実となれば、その資金を原資にチームの強化を一気に進める考えだ。
今夏の移籍市場において、ハムザ・イガマネは間違いなく注目すべき存在のひとり。どのクラブがこの才能あふれるモロッコ代表を手中に収めるのか。