2025年6月、劇的なプレーオフを制して、サンダーランドAFCがついにプレミアリーグの舞台に帰ってきた。熾烈な昇格争いを勝ち抜いたこの快挙は、スタジアム・オブ・ライトに集うファンにとって歓喜の瞬間だったに違いない。だが、新たな戦いはもう始まっている。
プレミアリーグ残留という現実的な目標を掲げる中で、クラブはすでに補強戦略を本格化。今夏の移籍市場で最初のターゲットとなっているのが、ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ所属の経験豊富なゴールキーパー、サム・ジョンストンであると、英『Sunderland Echo』が伝えた。
ウルブズでの出場機会に恵まれなかった2024-25シーズンを経て、移籍の可能性が高まっているジョンストン。リーグ戦での出場はわずか7試合、FAカップでは3試合にとどまった。プレミアリーグ経験も豊富で、クリスタル・パレスやウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンで安定したパフォーマンスを披露してきた彼は、いま再起の場を求めている。
その中で熱視線を送っているのが、昇格組のサンダーランドだ。32歳という年齢ながら、イングランド代表歴を持つ実力派GKは、プレミアリーグを戦う上での「安心感」をチームにもたらす存在となる。加えて、昨夏ウルブズに加入した際の移籍金は1000万ポンドとされているが、現在の立ち位置を考慮すれば、比較的手の届く金額での獲得が可能と見られている。
現時点ではリーズ・ユナイテッドも同選手に関心を示しているとされるが、サンダーランドにはもう一つ、大きなアドバンテージがある。
ジョンストンとの再タッグが現実味を帯びてきたのは、GKコーチとしてニール・カトラー氏の招聘が報じられたからだ。同氏はウルブズ時代、ジョンストンと密接に連携していた人物であり、いわば「師弟関係」とも呼べる関係性を築いていた。
クラブは今年2月に加入したトム・ウィール氏の退任をすでに発表しており、後任探しは急務となっている。新たなGK陣再編の一環として、カトラー氏の招へいは理にかなった選択であり、ジョンストン獲得にも直接的な影響を与える可能性がある。
守備陣の補強はさらに加速…チェルシーのディフェンダーにも関心
ゴールキーパーだけでなく、ディフェンスラインの強化にも余念がない。報道によれば、クラブはチェルシー所属の若手ディフェンダー、イシュー・サミュエルズ・スミスのローン獲得に関心を示している。
19歳ながら、左サイドバックとセンターバックの両方をこなすユーティリティ性を備え、2023年にはエヴァートンから400万ポンドでチェルシーに加入。ユースレベルでは高く評価されており、元エヴァートンU21指揮官のデイビッド・アンスワース氏からは「将来のイングランド代表を担う逸材」として期待されている。
サンダーランドはこの夏、即戦力と将来性のバランスを意識した補強を進めており、サミュエルズ=スミスのような若手に出場機会を提供することで、クラブの育成戦略にも好影響を与えると見られる。
長らくプレミアリーグの舞台から遠ざかっていたサンダーランドだが、昇格を果たした今、ただの客人ではなく、この舞台に定着するための布石を着々と打っている。ジョーブ・ベリンガムの売却によって資金面でも余裕が生まれ、補強戦略は一段と現実味を帯びている。