クアンサーの完全移籍が正式決定!レバークーゼンとの契約に込められたリバプールの未来戦略とは

クアンサーの完全移籍が正式決定!レバークーゼンとの契約に込められたリバプールの未来戦略とは Liverpool

リバプールが育て上げたセンターバック、ジャレル・クアンサーがついにアンフィールドを離れ、ドイツの名門バイエル・レバークーゼンへ完全移籍することで合意に達した。だがこの移籍は、単なる若手選手の放出にとどまらない。むしろリバプールが緻密に描いた未来設計図の一部として機能していることが明らかとなった。

リバプールは今回の移籍で、移籍金としておよそ3000万ユーロを確保。さらに最大500万ユーロのボーナスが追加される可能性があり、総額は最大で4000万ユーロに達する見込みだ。

注目すべきは、この金額がプレミアリーグにおけるプロフィット&サステイナビリティ規定(PSR)に基づいて、クラブにとって「純粋な利益」として計上される点にある。クアンサーはアカデミー育成のホームグロウン選手であり、その売却益はそのまま帳簿上の利益として反映される。

昨季以降、複数クラブがPSR対応に追われるなか、リバプールのように育成資産を活用した手法は、クラブ経営における一つの理想像となりつつある。

現在U21欧州選手権に出場中のクアンサーは、すでにレバークーゼン移籍への承認を済ませており、今週中にもメディカルチェックを経て5年契約を結ぶ運びとなっている。新天地では、今夏バイエルン・ミュンヘンへフリーで移籍したヨナタン・ターの後継者としての役割が期待されている。

この移籍において、リバプールが最も強くこだわったのが「買い戻し条項」の存在だ。独『BILD』が伝えたところによると、契約には6000万ユーロを超える金額、もしくは6000万ユーロに設定された買い戻しオプションが含まれているという。

この条項は、クアンサーがレバークーゼンに在籍中であれば、リバプールが優先的に獲得できる権利を意味する。さらに言えば、最大で5年間にわたって再獲得の道が保証されており、これはクラブにとって非常に強力な未来の選択肢となる。

2008年にクラブに加入し、長年にわたり育成してきた逸材を「完全に手放さない」――それがリバプールの本音であり、この買い戻し条項が象徴するメッセージでもある。2023年10月に結んだ長期契約も、この布石として機能していたことは想像に難くない。

今回の売却は、リバプールにとって金銭的なリターンを得つつ、選手の市場価値を維持し、将来的な復帰をも視野に入れた極めて戦略的な判断だ。育成型クラブとしての哲学と、競争力を保つための現実的な経営判断が、見事に融合したケースと言える。

再起を期すドイツでの挑戦!若きCBに求められるのは自信の回復

クアンサーはリバプールにほど近いウォリントン出身で、ユースチームでは主将を任されるなど順調にステップアップ。2023年にはブリストル・ローバーズへのローン移籍でシニア経験を積み、その後ユルゲン・クロップ前監督のもとでプレミアリーグデビューも果たした。

だが2024-25シーズン、アルネ・スロット新監督の下で出場機会は限定的となり、いくつかの痛恨のプレーが彼の評価を左右した。特にビルドアップ局面での判断ミスは、センターバックにとって致命的であり、自信の低下は否めなかった。

こうした背景を踏まえれば、今回の移籍は決してネガティブなものではない。むしろ、再び出場機会を掴み、自身の力で価値を証明する絶好の機会だ。攻守の切り替えが激しく、フィジカルと戦術理解が問われるブンデスリーガは、クアンサーにとって理想的な修行の場となるはずだ。

そして何より、リバプールはその成長を静かに見守っている。アンフィールドへの扉は閉ざされていない。ブンデスリーガで飛躍したクアンサーが、アンフィールドに舞い戻る未来はあるのか。