今夏の移籍市場を揺るがす存在となりつつあるのが、元リバプール主将ジョーダン・ヘンダーソンだ。現在35歳のMFは、2024年1月にサウジアラビアからアヤックスに加入。オランダで半年間を過ごしたものの、今シーズン終了後にフリーエージェントとなる可能性が高まっている。
その背景には、契約に盛り込まれた特異な条項の存在がある。英『Daily Mail』の報道によれば、7月中旬までに一定の条件を満たせば、無償でクラブを離れることが可能になるという。ベテランMFに対し、ノッティンガム・フォレストやマルセイユといった欧州クラブが水面下で動いており、移籍市場の注目銘柄として扱われているのも頷ける。
2026年の北中米ワールドカップ出場を目指すヘンダーソンにとって、今夏の移籍はキャリアの分岐点となる。現在のイングランド代表では、トーマス・トゥヘル新体制の下で復帰を果たしており、直近2度の代表招集メンバーに名を連ねている。だが、本大会のメンバーに滑り込むためには、より高いレベルの試合経験が求められる。
その中で具体的な動きを見せているのが、プレミアリーグのノッティンガム・フォレストとリーグ・アンのマルセイユだ。特にフォレストは来季のヨーロッパリーグ出場権を得ており、国際舞台での出場機会を求めるヘンダーソンにとって魅力的な選択肢となり得る。一方でマルセイユも国内リーグで安定した成績を残し、ヨーロッパ大会の常連として経験を積める環境にある。
また、一部報道では少年時代を過ごしたクラブ、サンダーランドへの復帰というシナリオも語られている。チャンピオンシップに所属する同クラブがプレミアリーグ昇格を果たすことが条件となるが、感傷的な意味合いを含んだ最後の挑戦も現実味を帯びてきている。
リバプールで築いた栄光と、アヤックスでの波乱の日々
リバプールでの12年間、キャプテンとして数々のタイトルをクラブにもたらしたヘンダーソンは、クラブの象徴的存在だった。プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、FAカップやクラブワールドカップなど、あらゆる舞台でリーダーシップを発揮。合計492試合の出場は、その献身性と安定感を物語っている。
一方、アヤックスでは到着早々キャプテンを任されるなど信頼を得たが、その日々は順調とは言いがたかった。1月にはモナコへの移籍が成立寸前まで進み、英『The Sun』によればクラブとの対立も表面化。
本人はモナコ移籍に前向きだったものの、アヤックス側が拒否したことで決裂。試合中にキャプテンマークの着用を拒否したり、交代時にファンへ別れを告げるような振る舞いを見せるなど、緊張関係が浮き彫りとなった。
アル・イテファク時代にはLGBTQ+をめぐる社会的批判も受けたが、アヤックスでの半年間はその傷を癒す時間でもあった。フランチェスコ・ファリオーリ監督のもとで中心選手として起用され、若手を牽引する姿はリバプール時代を彷彿とさせた。
今、彼は再び岐路に立たされている。代表キャリアを懸けた移籍か、アヤックス残留か。あるいは、感情に従って故郷クラブへの復帰を選ぶのか。いずれにしても、ジョーダン・ヘンダーソンの決断は、この夏の移籍市場における注目のトピックであることに変わりはない。