今夏の移籍市場で中盤の刷新を目指すウェストハム・ユナイテッドが、ACミランに所属するアメリカ代表ミッドフィールダー、ユヌス・ムサの獲得に関心を寄せている。指揮を執るグラハム・ポッター監督は、機動力に優れた新たな中盤戦力をチームに加えることを優先課題としており、その条件に最も合致する人材として、若き22歳のムサが候補に浮上していると、英『TEAMtalk』が伝えた。
すでに中盤には、エドソン・アルバレスやジェームズ・ウォード=プラウズ、ギド・ロドリゲス、トーマス・ソーチェクらが名を連ねているが、いずれもプレースタイルは静的で、フィジカルと守備面に重きを置いたタイプが中心。ピッチを縦横無尽に駆け回り、攻守両面でアクセントを加えられる選手は不足しており、ポッター体制における課題の一つとされてきた。
ACミランでの出場時間こそ安定していないものの、ムサの持ち味は何と言ってもスピードとスタミナ。スペイン・バレンシアからセリエAに渡った若き才能は、ロンドン育ちという経歴を持ち、かつてアーセナルのアカデミー「ヘイル・エンド」で将来を嘱望されていた存在でもある。
ナポリの撤退で交渉は混沌、ウェストハムに浮上の可能性
本来であれば、ムサの移籍先はナポリが最有力と見られていた。アントニオ・コンテ監督の下でプレーすることを本人が強く望んでいたことに加え、ナポリは移籍金2500万ユーロ+ボーナスの支払いに前向きだったからだ。
しかし交渉の最終局面で状況は一変。ACミラン側が追加でパフォーマンス関連のインセンティブを求めたことで、合意は一時白紙に。加えて、ナポリの中盤を支えるフランク・アンギサが残留を決断したこともあり、クラブはムサへの関心を冷却しつつあると、移籍専門記者ジャンルカ・ディ・マルツィオ氏が報じている。
こうした情勢を受け、ウェストハムは初期的なリサーチを進行中。現段階では正式オファーには至っていないものの、ミランとナポリの交渉が決裂したまま推移すれば、クラブが再び獲得レースに本格参戦する可能性は十分に残されている。
ただし障壁も多い。最も大きなネックは、やはり移籍金だ。ウェストハムは現時点で潤沢な予算を持つわけではなく、2500万ユーロというミランの要求額を満額支払うのは難しいと見られている。よって、時間の経過による値下げや、ローン移籍での交渉打診といった柔軟なアプローチが想定されている。
加えて、ムサ本人の希望がナポリに傾いている点も見逃せない。現地報道では、今週にもミランとナポリの間で新たな交渉ラウンドが設けられる予定であり、再合意に至れば彼の希望通りの移籍が成立する可能性もある。
ムサのような選手を迎えることで、ウェストハムの中盤に新たなリズムと変化をもたらすことができれば、ポッター体制の船出もより力強いものになるはずだ。とはいえ、財政面や選手本人の意向といった不確定要素が残る限り、交渉は予断を許さない状況にある。
交渉が進展するのか、それともナポリが再び主導権を握るのか。ウェストハムが描く中盤強化の青写真に、ユヌス・ムサの名が最終的に刻まれるのかどうか。その答えが明らかになるのは、もう少し先の話になりそうだ。