この夏の移籍市場が本格化するなか、プレミアリーグの中堅クラブが揺るがぬ姿勢で注目を集めている。ボーンマスがアントワーヌ・セメンヨに対して設定した評価額は、驚愕の7000万ポンド。ユナイテッド、トッテナム、ニューカッスルといった強豪勢ですら二の足を踏むほどの金額で、今夏の市場におけるひとつの分岐点となりつつある。
1999年生まれのセメンヨは、昨季のプレミアリーグでスピードと推進力を武器に9ゴールを挙げ、ボーンマスの攻撃陣をけん引した。彼が見せたプレーの数々は、単なる一過性のブレイクではなく、トップレベルでの再現性すら期待されるものだった。
しかし、ボーンマスは簡単には首を縦に振らない。選手本人は2024年7月に改善された新契約にサインしており、2029年までクラブに残る見通し。つまり、売却の必要性が皆無に等しい。
さらに、ボーンマスはこの夏すでにディーン・ハイセンをレアル・マドリードに、ミロシュ・ケルケズをリヴァプールに売却し、合計7000万ポンド超の収入を得ている。これにより、クラブは財政的な圧力から解放され、交渉の場でも明確な主導権を握っている。
英『The i Paper』は、ニューカッスルがセメンヨのリストアップを一時的に撤回したと報じており、またユナイテッドもブライアン・ムベンモとの交渉に傾きつつあるとされる。これ以上の主力の退団を避けたいボーンマスにとって、強気の姿勢にも頷ける。
セメンヨの7000万ポンドという評価額は突飛に思えるかもしれないが、これは決して例外ではない。マンチェスター・ユナイテッドがマテウス・クーニャ獲得に5500万ポンドを前払いし、さらにアドオン付きで交渉を進めている例を見ても、今夏の移籍市場は全体的に高騰傾向にある。
クリスタル・パレスのエベレチ・エゼには6800万ポンドのリリース条項が設定されており、複数のクラブがその動向を注目している。
こうした市場環境の中で、セメンヨの7000万ポンドという設定はある種の基準として機能している可能性もある。実績あるプレミアリーグ選手に対しては、海外リーグからの補強よりも安心感があるとの声もあり、国内クラブ間での移籍が主戦場となっている点も見逃せない。
アントワーヌ・セメンヨは、25歳にして既にプレミアリーグのテンポとフィジカルに適応した貴重な人材であり、その実績と市場価値は来季以降も注目を集める存在であることに変わりない。