ロンドンのライバル関係に新たな火種が持ち込まれた。プレミアリーグの覇権奪還を狙うアーセナルが、チェルシーに所属するニコラス・ジャクソンに関心を寄せている。ミケル・アルテタ監督は今夏の移籍市場においてストライカーの補強を最優先に掲げており、そのターゲットの一人としてジャクソンの名前が挙がっているようだ。
セネガル代表フォワードは、2023年夏にビジャレアルからチェルシーへ加入。移籍金は3180万ポンドと報じられ、将来を嘱望される存在だった。以来、公式戦80試合で30得点という数字を残しているが、評価は決して一枚岩ではない。特に一貫性に欠けるプレースタイルには批判の声もあり、起用法も安定しなかった。
それでもアーセナルはこの23歳のポテンシャルを高く評価しているようで、ジャーナリストのダンカン・キャッスルズ氏は『The Transfers Podcast』にて、今夏の補強リストにジャクソンの名前が含まれていると明かした。
チェルシーは先日、イプスウィッチ・タウンからリアム・デラップを3000万ポンドで獲得しており、攻撃陣の再編に動いている。キャッスルズ氏によれば、クラブとしてジャクソンを積極的に放出する姿勢は見せていないものの、チーム内で不可侵の存在ではないとされており、高額のオファーが届けば売却に傾く可能性もあるという。
アルテタの哲学転換と広がるターゲット網
昨季のアーセナルは、プレミアリーグで再びタイトル争いに食い込むも、怪我人や出場停止といった不測の事態が重なり、あと一歩のところで王座を逃した。この苦い経験を踏まえ、アルテタ監督はかつて好んでいた「スリムなチーム」からの脱却を図っている。
2025-26シーズンに向けて、より大きな選手層の構築を目指す指揮官は、今夏の移籍市場でセンターフォワードの補強を不可欠と位置づけており、昨夏のような機を逃す補強失敗は繰り返さない構えだ。
クラブは選手や代理人に対して「財政的に理にかなった取引」を優先事項とする姿勢を明示し、複数の候補を慎重に精査している。ギェケレシュ、シェシュコ、ワトキンスといった既存のターゲットに加えて、今回新たにジャクソンがリストアップされた背景には、アルテタが「最良の選択」を求めてあらゆる可能性を検討していることがうかがえる。
一見するとライバルクラブ間での移籍という壁が立ちはだかるが、チェルシー側の態度次第では交渉の扉が開かれるかもしれない。いずれにしても、この動きはアーセナルが補強において既成概念にとらわれず、柔軟かつ実利を重視したアプローチを採っていることを強く示すものだ。
果たしてエミレーツ・スタジアムに新たなエースとして足を踏み入れるのは誰になるのか。今夏の移籍市場は、アーセナルにとってクラブの未来を占う重要な戦場となるだろう。