カーニー・チュクエメカの去就に新たな展開が生まれている。今季後半にチェルシーからローンで加入し、ボルシア・ドルトムントの中盤に新たなエネルギーをもたらした21歳MF。彼の残留を巡って、ドイツの名門クラブが本格的な動きを見せている。
ドルトムントのスポーティングディレクター、セバスチャン・ケール氏は、先日行われたクラブ・ワールドカップ終了後にも「彼をクラブに留めたい」と語っており、チュクエメカの評価が極めて高いことを明かしている。事実、クラブはこの大会によって得た賞金約3800万ポンドを、新戦力の獲得資金として活用する構えだ。
完全移籍か再ローンか?チェルシーとの交渉は難航必至
チュクエメカは今年2月にローンでドルトムントに加わり、公式戦16試合に出場。1ゴールという数字以上に、中盤でのボール保持やプレッシャー回避、攻撃への推進力など、存在感は随所に見られた。ローン契約はクラブ・ワールドカップの準々決勝終了まで延長され、レアル・マドリードに敗れたことで一旦チームを離れる形となっている。
ケール氏は「カーニーが我々に加わったことは良い動きだった」と評価し、「彼を留めるために間違いなく努力する」とコメント。チェルシーとの交渉に前向きな姿勢を示したが、その道のりは容易ではない。
英『talkSPORT』の報道によると、チェルシーはチュクエメカを約4000万ポンドで評価しており、これは契約解除条項に相当する額。ドルトムントにとって、この金額を一括で支払うのは現実的に厳しく、買取オプション付きローンや、将来的な買取義務付き契約といった選択肢を模索しているようだ。
一方で、選手本人もドルトムント残留に好意的だとされており、クラブとの関係も良好。ケール氏は「我々は選手とかなり親密な関係にあり、彼もドルトムントを愛している」と語り、交渉成立への自信ものぞかせている。
今回の交渉が進展する背景には、クラブ・ワールドカップで得た予想外の“棚ぼた収入”の存在がある。ドルトムントは同大会で準々決勝に進出し、約3800万ポンドもの賞金を手にした。これは大会前に想定していた予算を大きく上回る額であり、チュクエメカの完全移籍を現実のものとする可能性が出てきた。
さらに、ドルトムントとチェルシーは近年多くの取引を行っており、クラブ間の関係性は極めて良好だ。実際、今夏もジェイミー・ギッテンズが5200万ポンドでチェルシーに移籍したばかりで、両クラブ間には信頼関係が築かれている。
ギッテンズの移籍は、クラブ・ワールドカップ出場を見据えた交渉だったが、最終的に6月下旬に契約が成立。ケール氏は「チェルシーは非常にプロフェッショナルで意欲の高い若手選手を獲得した」と語り、両クラブの円滑な交渉を印象づけた。
ケール氏は今夏の移籍市場について「選手層への大幅な再投資」を掲げており、チュクエメカのような若手タレントへの投資を通じて、来季のタイトル獲得とチャンピオンズリーグでの飛躍を目指す方針を明確にしている。
クラブのブランド価値も、今回のクラブ・ワールドカップ参加によって大きく向上した。アメリカ開催の特性上、キックオフ時間や気候、ピッチ状態など課題もあったものの、「再び世界で最高の8チームの一つになれたことは素晴らしい成果」とケール氏は振り返っている。
ドルトムントの2025年夏は、経済的な余裕と若手選手の成長が交錯する重要な分岐点となりそうだ。チュクエメカを巡る交渉の行方はいかに。