今夏の移籍市場もまた、欧州サッカーの風向きを変える出来事が次々と巻き起こっている。中でもイタリアの名門ACミランは、新たな時代の扉を開こうとしている。主力左SBのテオ・エルナンデスをアル・ヒラルへの売却が決定的なミランが、その後釜としてリストアップしているのが、プレミアリーグのトッテナムに所属するデスティニー・ウドジェだ。
英『TBR Football』によれば、22歳のウドジェは、エルナンデスに代わる補強としてミランの最上位ターゲットに位置付けられているという。昨季もトッテナムで印象的なシーズンを過ごし、ヨーロッパリーグでも持ち味を発揮したウドジェは、すでにイタリア代表としての地位も確立。左サイドを上下動するダイナミズムと守備力、さらに攻撃参加時の的確な判断は、多くのクラブのスカウトを唸らせてきた。
ミランが彼を熱望する理由は単なる代役探しではない。イタリア国籍を持ち、かつ将来的な売却益も視野に入る点から見ても、クラブとしては非常に理にかなったターゲットだろう。一方で、トッテナムがこの逸材を簡単に手放すとは考えにくい。
ウドジェの胸中に揺れる二つの選択肢とミランの次なる一手
英『TBR Football』のグレアム・ベイリー記者によると、選手本人はミラン行きに前向きな姿勢を見せているようだ。歴史あるサン・シーロでのプレー、そして今夏就任が決定的とされるマッシミリアーノ・アッレグリの指導を受けられることに、大きな魅力を感じているという。
だが現実はそう簡単ではない。トッテナムはウドジェの慰留を図っており、今季から指揮を執る新監督トーマス・フランクは彼の成長に期待を寄せている。ブレントフォード時代にキーン・ルイス=ポッターを左SBで起用した実績もあるフランクは、ウドジェにも攻撃的な役割を与え、新たなポテンシャルを引き出そうとしている。
ミランはウドジェにこだわる一方で、複数の代替プランも同時に進めている。アーセナルに所属するウクライナ代表のオレクサンドル・ジンチェンコはその一例だ。2022年に加入した同選手だが、昨季は国内リーグの先発出場は5試合にとどまり、現在は移籍を視野に入れているとの見方が強まっている。
さらに、フラムのアントニー・ロビンソンに対する関心も継続中であり、トッテナムと同様にヘントのアーチー・ブラウンやジェノアのオネスト・アハノールといった新鋭の名前も候補として挙がっている。
ACミランは今、変革の渦中にいる。テオ・エルナンデスの退団は確かに大きな損失だが、それを機により機動力と若さを備えた新たな左SBを迎え入れようとしている。
ウドジェがサン・シーロに立つ未来は果たして訪れるのか。それとも、トッテナムの新体制の中でさらなる飛躍を遂げるのか。