トッテナムが今夏の大型補強に踏み切った背景にあるスタジアム命名権の売却

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トッテナムが今夏の大型補強に踏み切った背景にあるスタジアム命名権の売却 Tottenham Hotspur

トッテナム・ホットスパーがここに来て、前のめりな補強に動いている。これまで市場の終盤まで粘り強く交渉するスタイルを貫いてきたクラブが、今回は早い段階から多額の資金を投じて主力級の戦力を複数補強。その背景には、長らく宙に浮いていたスタジアムの命名権契約が大きく関係しているのではないかと見られている。

これまでにも何度か交渉の存在が報じられてきたが、英『Telegraph Sport』によれば、現在トッテナムはスタジアムの命名権を巡って有利な契約の締結に向けて動いており、最終段階に入っている模様。

候補にはアメリカやサウジアラビアの複数企業が含まれており、なかでもサウジの企業2社のうち1社は政府系ファンドであるPIFと関係があるという。ベン・ジェイコブス氏のレポートでもこの点は強調されており、実現すれば巨額の資金がクラブに流入する可能性がある。

トッテナムはすでに、ウェストハムからモハメド・クドゥスを獲得し、クラブ史上4番目の高額補強となったほか、モーガン・ギブス=ホワイトのりリース条項発動にも動いた。さらに、高井幸大やマティス・テルなど将来有望な若手にも積極投資しており、その合計額はこれまでのクラブの姿勢と比べて異例と言える。

一方で、クラブの財政状況は決して余裕があるわけではない。トッテナムは現在、約2億7930万ポンドという純移籍負債を抱えており、オーナー企業ENICからの資金注入も過去には限られていた。2022年5月には株式発行で9750万ポンドを調達したが、それ以降は目立った投資は確認されていない。

そのため、今回の移籍市場での積極補強は、命名権契約を含む外部からの資金流入が現実味を帯びてきた証左と見る声が多い。

命名権契約がクラブの未来を左右する転換点に

2018年の開場以来、トッテナム・ホットスパー・スタジアムにはスポンサー名が付いておらず、無命名状態が続いてきた。ダニエル・レヴィ会長は一貫して「適正価格での契約」を求める姿勢を崩しておらず、年間2500万ポンドという高額な命名権料を望んでいたと報じられている。

ただし、この価格が維持されているのか、それとも交渉の過程で現実的な金額に調整されたのかは明らかになっていない。スタジアムの命名権に関しては、過去にも交渉が報じられたが、最終合意に至るまでには至っていなかった。今回も最終交渉の段階にあるとはいえ、まだ公式発表は行われておらず、交渉がまとまるかどうかは不透明なまま。

命名権をサウジ企業が獲得する可能性については、一部でスポーツウォッシングへの懸念も指摘されている。特定国家がスポーツを通じてイメージ向上を図る動きに対して疑問を呈している。ただし、ビジネス面では避けられない現実として、命名権がいずれは大企業、場合によっては物議を醸す存在に渡る可能性は以前から指摘されていた。

また、クラブ内部でも変化の兆しは明確だ。元アーセナルCEOのヴィナイ・ヴェンカテシャムを新たに任命したほか、長年クラブ運営に関わってきたドナ・カレンが退任。こうした人事も、トッテナムが商業戦略を新たなフェーズに進めていることを示唆。

スタジアム命名権が正式契約となれば、トッテナムは財政的に大きな後ろ盾を得ることになる。今後の移籍市場における競争力はもちろんのこと、欧州のトップクラブとの距離を一気に縮める足掛かりにもなるだろう。