昨シーズンはプレミアリーグで16位に沈み、新シーズンこそは上位を狙い、再建を進めるウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズが、今夏に大きな決断を迫られている。クラブを5シーズンにわたって支え続けた左サイドバック、ラヤン・アイト=ヌーリがマンチェスター・シティへの移籍を決断したことで、チーム構成に大きな変化が訪れようとしている。
アイト=ヌーリはアルジェリア代表としても存在感を発揮してきた実力者で、ウォルヴスでは攻撃面でも貴重なアクセントを加えてきた。精度の高いクロス、意表を突くドリブル、そしてプレミアリーグにおける経験値。彼の退団はヴィトール・ペレイラ監督にとって大きな痛手となるのは間違いない。
その一方で、クラブは早くもポスト・アイト=ヌーリに向けた動きを見せている。後任として注目されているのが、スイス・スーパーリーグのヤングボーイズに所属するアルジェリア代表の左サイドバック、ジャウエン・ハジャムだ。
22歳という若さながら、ハジャムは昨シーズンのスイス国内リーグで突出したパフォーマンスを披露し、リーグベストイレブンにも名を連ねた。シーズンを通して公式戦47試合に出場し、2ゴール3アシストを記録。さらにUEFAチャンピオンズリーグでも6試合に出場し、欧州の舞台での実力も証明している。
サッカージャーナリストのサシャ・タヴィオリエリ氏によれば、ヤングボーイズはハジャムに対して700万ユーロの移籍金を設定しており、現時点でこの金額を満額で提示できるクラブはウォルヴァーハンプトンのみだという。
若き才能ハジャムが描くプレミアリーグ挑戦か
ジャウエン・ハジャムの魅力は、単なる守備力にとどまらない。試合を通して高い集中力を維持し、ポゼッション時には中盤への絞りや前線へのオーバーラップで厚みを加える動きが光る。高い技術力と規律を併せ持つプレーヤーとして、アイト=ヌーリとの共通点も多い。
ハジャムにはドイツのアウクスブルク、イタリアのトリノ、スペインのセビージャといったクラブも関心を寄せているが、セビージャは財政的な問題を抱え、トリノは補強ポイントの優先順位が異なると見られている。結果として、ウォルヴァーハンプトンがこの獲得レースを優位に進めている。
選手自身も、キャリアの次のステージをプレミアリーグと見据えており、より高いレベルでの競争を望んでいるという。かつてはパリ・サンジェルマンでのプレーを夢見たとも語られていたが、現在はより現実的な目標として、出場機会と欧州でのさらなるステップアップを重視しているようだ。
ヤングボーイズとの契約は2028年まで残っているため、交渉には多少の時間を要する可能性はあるが、ウォルヴァーハンプトンはすでに移籍金の支払い能力を示しており、最終的な条件面での合意に向けた前向きな姿勢を崩していない。
アイト=ヌーリの穴を埋めることは簡単な作業ではない。しかし、ジャウエン・ハジャムがそのポテンシャルを存分に発揮すれば、モリニューの地に新たなヒーローが誕生する日も遠くない。