苦難と覚醒…チェルシーFWジョアン・ペドロが歩んだ逆境からの成長

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苦難と覚醒…チェルシーFWジョアン・ペドロが歩んだ逆境からの成長 Chelsea

ジョアン・ペドロの人生に順風満帆という言葉は似合わない。2001年にブラジルのリベイラン・プレートで生まれた彼は、父親が幼少期に服役したことにより、母フラヴィアに育てられた。彼女は息子の夢のために全てを捧げ、故郷を離れ、720km離れたリオデジャネイロでの新生活に踏み出した。

このような背景を持つジョアン・ペドロは、フルミネンセのアカデミーに加入し、サッカーに没頭。守備的MFとして始まったキャリアはやがて攻撃的なポジションへと変化し、多才なプレースタイルが注目を集めるようになる。2019年にトップデビューを果たすと、4試合7得点という鮮烈なインパクトを残した。

当時の監督フェルナンド・ジニスは、「あれは偉大な選手にだけ訪れる瞬間だ」と評し、彼の将来を高く評価した。若きブラジル人はすでに、前線でのポジショニング、フィジカル、鋭い動き、そして守備的起点としての連携能力を兼ね備えていた。

英国での挑戦…ワトフォードとブライトンで見せた進化

2020年、イングランドのワトフォードへ移籍したジョアン・ペドロは、欧州サッカーへの適応を求められる日々を過ごすことになる。7kgの増量でフィジカルを補強しながら、セカンドストライカーやワントップとしての役割をこなした。

初年度には、ゴール数のみならず、ドリブル成功数や守備アクションなどでもチーム上位にランクイン。キャプテンのトロイ・ディーニーは「彼は必ず高いレベルに到達する」と太鼓判を押した。

2023年には、クラブ史上最高額となる3000万ポンドでブライトンに移籍。ヨーロッパリーグのグループステージで6得点を挙げたことに触れ、ジョアン・ペドロは “現代的な9.5番” と称された。ライン間に顔を出し、中盤と前線をリンクする“接着剤”のような役割でチームを機能させた。

PK精度の高さも特筆すべき点で、19本中18本を成功させている。ブライトンではファビアン・ヒュルツェラー監督のもと、自由な動きを許されることで、彼の空間認識能力が一層引き出された。

ただし、競争心の強さが時に裏目に出ることもある。2025年4月のブレントフォード戦では退場処分を受け、チーム内でも小競り合いが報じられた。しかし、それすらも彼にとっては成長の一部だった。

チェルシー移籍へ!変幻自在の攻撃オプションとして期待

そして2025年7月、ジョアン・ペドロはチェルシーへ完全移籍。移籍金は5500万ポンド+最大500万ポンドのボーナスという巨額で、契約期間は2033年までと発表された。英『Sky Sports』によれば、彼はロンドン残留を希望しており、ニューカッスルからのオファーを断ったという。

デビュー戦となったクラブW杯のフルミネンセ戦では、古巣に対する配慮からセレブレーションを控えつつも、2ゴールという最高の形で新天地の第一歩を踏み出した。

エンツォ・マレスカ監督は「ジョアン・ペドロはワイド、トップ下、センターフォワードのどこでもプレーできる」と語り、その柔軟性を高く評価。ボールを持たない時の知性はフィルミーノを彷彿とさせると評価するメディアも現れた。

技術と戦術理解に優れたこのブラジル人アタッカーの加入により、ジャクソンやデラップら他のFWはより純粋なフィニッシャーとして機能することが可能となる。チェルシーの攻撃は、確実にバリエーションを増すことだろう。

まだ見ぬ頂へ “最高の一杯”が注がれる時

ジョアン・ペドロのこれまでのキャリアは、まるで丁寧に焙煎されたコーヒー豆が最上の一杯へと変わる過程そのものだ。ブラジルという肥沃な土壌で芽を出し、イングランドの地で研磨され、そして今、チェルシーというカップに注がれた。

ブラジル代表関係者も「彼には機動力と流動性を活かす起用が必要」と語っており、今後の代表定着にも期待が集まっている。

メンタリティ、プレービジョン、ボールキープ力、どれを取ってもプレミアリーグで通用する資質を備えた若き万能アタッカー。コンスタントに出場機会を得られれば、15ゴールという数字も夢物語ではない。ジョアン・ペドロがスタンフォード・ブリッジを舞台に、飛躍する日は遠くない。