エティハド・スタジアムの片隅で、32歳のドイツ人GKステファン・オルテガが静かに決断の時を迎えている。マンチェスター・シティで3シーズンにわたってエデルソンの控えを務めた職人が、ついにスポットライトの中央へ向かう道筋を見つけた。
その行き先は、ジョゼ・モウリーニョが指揮を執るフェネルバフチェ。トルコの名門クラブが、このベテランキーパーにヨーロッパの舞台で再び輝く機会を提供しようとしている。
ドイツメディア『Sky Germany』が伝えたところによると、トルコ・スュペル・リグの強豪フェネルバフチェは現在、マンチェスター・シティとオルテガの移籍について交渉を進めているようだ。
この動きは、ジェームズ・トラフォードの2700万ポンドでの復帰がFabrizio Romano氏によって報じられた直後に活発化した。若きイングランド代表候補の帰還は、オルテガのエティハドでの立ち位置をさらに不安定なものにしている。
2022年にアルミニア・ビーレフェルトからフリートランスファーでマンチェスター・シティに加入したオルテガは、その技術の高さで多くの専門家から評価を受けてきた。ドイツ代表にも2024年11月と2025年3月に招集された。
しかし、エティハドでは常にエデルソンの壁に阻まれ続けた。昨シーズンは21試合に出場し7度のクリーンシートを記録したものの、それでも彼の真価を発揮するには不十分だった。
キャリア晩年の重大な決断
契約が来夏に満了を迎えるオルテガは、3つのプレミアリーグクラブとトルコの巨人フェネルバフチェからの関心を集めている。32歳という年齢を考えれば、これは彼にとってキャリア最後の大きな決断となる可能性が高い。
マンチェスター・シティではトラフォードの復帰により、来シーズンの出場機会はさらに限定的になることが予想される。一方で、フェネルバフチェは彼に正ゴールキーパーとしての地位と、チャンピオンズリーグでプレーする機会を提供できる。
オルテガのプレースタイルは現代的なゴールキーパーの見本とも言える。185センチとゴールキーパーとして決して高くない身長ながらも、繰り出される確実なキャッチング技術、足元の技術を活かしたビルドアップ能力、そして冷静な判断力。
これらの要素は、ボールポゼッションを重視するモウリーニョの戦術にも完璧にフィットする。トルコリーグでの経験はないものの、彼のキャリアを通じて培われた適応力は、新しい環境でも力を発揮するはずだ。
ブンデスリーガでの長いキャリアを経て、プレミアリーグでも確実に実力を証明してきたオルテガ。アルミニア・ビーレフェルトでは2部から1部への昇格に貢献し、その後の1部残留でも重要な役割を果たした。
モウリーニョが描く新戦略の核心
モウリーニョは昨シーズン、ゴールキーパーのポジションでの不安定さに悩まされた。オルテガの獲得は、その問題を一気に解決する可能性を秘めている。マンチェスター・シティが彼を世界クラスの選手として評価していることからも、その実力は疑いようがない。
競合他社との争奪戦も激化している。プレミアリーグの3クラブがオルテガ獲得に向けて動いていると報じられており、フェネルバフチェは国内外の強豪との競争を勝ち抜かなければならない。しかし、トルコの名門には他のクラブにはない魅力がある。それは、確実な正ゴールキーパーのポジションと、ヨーロッパの舞台での活躍機会。
契約満了まで1年を切った状況は、オルテガにとって移籍の絶好のタイミングでもある。マンチェスター・シティも彼の意向を尊重し、適正な移籍金での放出に応じる可能性が高い。これまで3年間、クラブに忠実に仕えてきた功労者への配慮として、合理的な条件での移籍を認めるだろう。
モウリーニョという世界最高峰の指導者の下で、彼のキャリアに新たな章が刻まれることになるのか。もしくはトラッフォードとのレギュラー争いに臨むのか。シティやオルテガの決断に注目が集まる。