プレミアリーグの移籍市場に、また一つ興味深い動きが生まれている。ウェストハム・ユナイテッドが、バイエル・レバークーゼンで活躍するモロッコ代表アタッカー、アミン・アドリの獲得に本腰を入れ始めた。
フランス人ジャーナリストのJulien Laurens氏が明かした情報によれば、グラハム・ポッター監督は、この25歳の万能アタッカーを今夏の最重要補強ターゲットの一人として位置づけているという。
ポッター監督が求める理想のアタッカー像
アミン・アドリという選手を語る上で欠かせないのが、その驚異的なスピードと卓越したテクニックだ。身長175センチと決して大柄ではないが、左ウィングを主戦場としながらも、センターフォワードやトップ下でも違いを生み出せる戦術的柔軟性を持つ。
Julien Laurens氏は彼を「非常に速く、非常にスキルフル」と評しており、まさにプレミアリーグが求める現代的なアタッカーの条件を満たしている。
しかし、アドリの真の価値は攻撃面だけにとどまらない。ボールを失った瞬間から始まる献身的な守備貢献は、ほとんどのアタッカーには欠けているクオリティとして高く評価されている。
前線からの激しいプレッシングと守備時の規律正しい動きは、まさにポッター監督が理想とするサッカーの体現者と言えるだろう。
昨季のブンデスリーガ制覇に貢献したシャビ・アロンソ前監督も、アドリのハングリー精神とインテンシティを絶賛していた。スルーパスやキーパスを頻繁に繰り出す創造性と、175センチという身長ながらボックス内で見せる空中戦での脅威。この多面性こそが、ウェストハムが彼に熱い視線を送る理由だ。
クドゥス退団の穴を埋める切り札となるか
ウェストハムにとって今夏の最大の課題は、モハメド・クドゥスの退団によって生じた攻撃陣の穴をいかに埋めるかという点にある。クドゥスが持っていたドリブル突破力と得点能力を補える選手の獲得は急務だが、アドリはその有力候補として浮上している。
バイエル・レバークーゼンでの142試合で23ゴール24アシストという数字は、決して派手なものではない。特にゴール数に関しては「ドイツのトップリーグでの彼のゴール数は最も印象的ではない」という評価もあり、クドゥスの後釜として期待される得点力には疑問符がつく。しかし、アドリの持つ戦術的な多様性と献身性は、チーム全体の攻撃力を底上げする可能性を秘めている。
移籍金に関しては2,300万ポンドという金額が報じられており、現在の市場価値を考えれば決して法外な金額ではない。むしろ、25歳という年齢と豊富な経験、そして何よりプレミアリーグでのプレーを熱望している本人の意欲を考慮すれば、ウェストハムにとって魅力的な投資と言えるだろう。
ただし、ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズも獲得レースに参戦しているとの情報もあり、交渉は一筋縄ではいかない可能性は否定できない。ウェストハムの首脳陣は、アドリが唯一のターゲットではないことを示唆しており、複数の選択肢を検討しながら最適な補強を進める構えだ。
アミン・アドリという選手は、単純にクドゥスの代替品として見るべきではない。彼の持つ戦術的柔軟性、献身的な守備貢献、そして何より勝利への飢えた精神は、ポッター体制下のウェストハムに新たな風を吹き込む可能性を秘めている。