昨夏、2500万ポンドという巨額の移籍金でサウサンプトンに加入したアーロン・ラムズデールにとって、この1年は悪夢以外の何物でもなかった。イングランド代表にも選出された経験を持つ27歳GKはプレミアリーグ最下位という不名誉な順位とともに、チャンピオンシップの舞台へ転落。
しかし、そんな彼に救いの手を差し伸べようとしているのが、昨季プレミアリーグで5位フィニッシュを飾り、新シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を手に入れたニューカッスル・ユナイテッドだ。
英『Sky Sports』のキース・ダウイー記者が報じたところによると、ニューカッスルはラムズデール獲得に向けてサウサンプトンと本格的な交渉に入った。ジェームズ・トラフォードのマンチェスター・シティ復帰により、マグパイズは新たなゴールキーパー獲得を急務としており、27歳のラムズデールが最有力候補として浮上している。
🚨 EXCLUSIVE: Aaron Ramsdale is in talks to sign for Newcastle.
— Keith Downie (@SkySports_Keith) July 28, 2025
🏴 The England international played under Eddie Howe at Bournemouth and #NUFC were interested in signing him last summer.
🧤 #NUFC missed out on James Trafford, who is moving to Man City instead, and have turned to… pic.twitter.com/1uQaLSqRl5
この移籍は普通の移籍劇とは異なる。エディ・ハウ監督とラムズデールは、ボーンマス時代に共に戦っていた過去があるから。2017年から2019年にかけて、若きラムズデールはハウの指導の下でプレミアリーグデビューを果たし、その才能を開花させた。再び師弟コンビを組むことで、ラムズデールは降格請負人という不名誉なレッテルを剥がすことができるのだろうか。
エディ・ハウ戦術がラムズデールの真価を引き出す理由
ニューカッスルでのラムズデール起用を考える上で、エディ・ハウ監督の戦術的アプローチを理解することは不可欠だ。ハウが好む4-3-3システムは、ゴールキーパーに高度な足元の技術と判断力を要求する。特に相手の前線からのプレッシングに対して、正確なビルドアップ能力が求められるのだ。
この点において、ラムズデールの持つスキルセットは理想的と言える。アーセナル時代に培った正確なパス精度と、危険な状況での冷静な判断力は、ハウの求める現代的なゴールキーパー像と完全に合致している。実際、2022-23シーズンにアーセナルがタイトル争いを演じた際、ラムズデールのフィードから生まれた攻撃機会は数知れない。
さらに注目すべきは、ニューカッスルの守備陣との相性だ。ファビアン・シェアやスヴェン・ボトマンといったセンターバックは、いずれも高い空中戦能力を誇る一方で、足元の技術にも長けている。ラムズデールの正確な配球が、彼らの持ち味を最大限に活かすことは間違いない。
現在のニューカッスルは、ニック・ポープが正守護神を務めているが、33歳という年齢を考慮すると、後継者の確保は急務。マルティン・ドゥブラフカもすでに36歳であり、サウジアラビアへの移籍も噂されている。こうした状況下で、プレミアリーグでの豊富な経験を持つラムズデールの獲得は、チームの長期的な戦略として極めて理にかなっている。
サウサンプトンでも降格…ラムズデールの“呪縛”は解けるのか
ラムズデールのキャリアは、常に評価と批判の狭間にあった。シェフィールド・ユナイテッド、ボーンマス、そして昨季のサウサンプトン。在籍した3クラブすべてでプレミアリーグからの降格を経験している。
特に記憶に新しいのは、2024-25シーズンにレンタルで加入したサウサンプトンでのプレーだ。リーグ戦では22試合に出場し、チーム最多の85セーブを記録したものの、被シュート数が圧倒的に多く、失点数は45。セーブ率は66.7%にとどまり、後半戦の数試合ではポジションをマッカシーに譲る場面もあった。
しかし、このスタッツだけで彼を戦犯と呼ぶのは早計だ。そもそも、サウサンプトンの守備陣は組織的な強度に欠け、中盤でのボールロストも多かった。後半戦はシステム変更によりラインが高くなり、GKへの負担も増していたのは明らかだ。
それでも、足元の技術や配球能力、状況判断の早さといった部分での貢献度は高く、ファンや一部メディアからは「チームに残るなら主将候補」と評価された。つまり、降格という結果の中にあっても、ラムズデール個人としては再評価すべき点が多いのだ。
ただし、懸念材料がないわけではない。降格チームの主力として戦ったことで、ラムズデールのマーケットバリューは確実に下がっている。アーセナル時代の輝きを取り戻すためには、ニューカッスルという新天地で結果を出し続けなければならない。
興味深いのは、ハウ監督がラムズデールのメンタル面を熟知していることだ。ボーンマス時代、若手だったラムズデールを辛抱強く育て上げた経験を持つ同監督ならば、現在の彼が抱える課題も的確に把握しているだろう。
プレミアリーグ復帰への道のりは決して平坦ではないが、ラムズデールにとってニューカッスル移籍は絶好のチャンス。ハウの指導を再び受けることができれば、ラムズデールは降格請負人という不名誉な称号を返上し、イングランド代表復帰への道筋も見えてくるはずだ。
移籍金の詳細はまだ明らかになっていないが、サウサンプトンとしてもチャンピオンシップで戦う選手に高額な年俸を支払い続けるメリットは少ない。双方にとって合理的な判断となる可能性が高く、近日中に何らかの進展があることが予想される。