アル・ナスルがチェルシーの左サイドバック、マルク・ククレジャに対して破格のオファーを準備していることが明らかになった。クリスティアーノ・ロナウドを軸とした体制構築を進める中東の巨人が、今度はプレミアリーグの舞台で躍動するスペイン代表DFに狙いを定めている。
ロナウドが選んだ指揮官の野望
ホルヘ・ジェズス新監督は就任にあたり、「クリスティアーノ・ロナウドなしには、私はここにいなかった」と発言。この言葉が示すのは、アル・ナスルの新たな権力構造。70歳のポルトガル人指揮官は、ロナウドが2年契約を延長し、2025-26シーズンでのタイトル奪還を決意している現状を受け、チーム再編の核心に据えられた存在となっている。
ジェズスの手腕は疑う余地がない。アル・ヒラルでの成功体験を持つ彼が、今度はライバルクラブで指揮を執る。この皮肉な展開こそが、サウジアラビアサッカー界の熾烈な競争を物語っている。アル・ナスルの首脳陣は、ベテラン指揮官が勝利のメンタリティをチームにもたらし、2023年以来となるサウジ・プロリーグ制覇を実現することを期待している。
ククレジャ獲得の背景には、明確な戦術的意図がある。ジェズスが好む攻撃的サッカーには、サイドバックの上がりが不可欠。スペイン人DFの持つ豊富な運動量と正確なクロス精度は、ロナウドの得点力を最大化する重要なピースになり得る。
27歳のククレジャは、チェルシーでの経験を通じて世界最高峰の戦術理解を身につけており、アル・ナスルが目指すレベルアップに直結する補強と言えるだろう。
興味深いのは、ロナウドの出場時間を25%削減する計画が報じられている点。40歳となったスーパースターの負担軽減は必要不可欠だが、それは同時に他の選手への依存度増加を意味する。ククレジャのような高品質な選手の存在こそが、この戦略を成功に導く鍵となる。
チェルシーが手放したくない理由
一方、チェルシーサイドの事情も複雑だ。27歳のククレジャに対してバルセロナとレアル・マドリードからも関心が寄せられているものの、チェルシーは売却の意図を全く示していない。エンツォ・マレスカ監督にとって、左サイドバックは最も重要なポジションの一つとなっている。
ククレジャのチェルシーでの成長は目覚ましい。2022年夏の加入当初は適応に苦労したが、現在では欠かせない戦力として確固たる地位を築いている。特に守備面での安定感と、攻撃参加時の判断力は格段に向上している。カンファレンスリーグやクラブワールドカップでの活躍は、彼の国際舞台での経験値を物語っている。
スペイン代表としての活動も、ククレジャの市場価値を押し上げている。ユーロ2024での躍動は記憶に新しく、左サイドの攻防両面での貢献度は各国クラブの注目を集めた。
しかし、アル・ナスルが準備する拒否できないオファーとは、一体どの程度の金額なのか。スペイン紙『Marca』が報じたところによると、アル・ナスルは間もなくチェルシーに対して “感動的” なオファーを提示し、ククレジャをロンドンから引き離そうと試みる予定。サウジアラビアマネーの威力を考えれば、5000万ユーロを超える提示も現実的な選択肢となる。
チェルシーが直面するジレンマは深刻。左サイドバックの選択肢が限られている現状で、主力選手を手放すリスクと、巨額の売却益を得るメリットのバランスをどう取るか。ファイナンシャル・フェアプレー規則の影響を考慮すれば、魅力的なオファーを完全に無視することは困難かもしれない。
ククレジャ本人の意向も重要な要素だ。プレミアリーグでのキャリア継続を望む一方で、サウジアラビアでの巨額年俸は選手人生を一変させる可能性を秘めている。27歳という年齢を考えれば、最後の大型契約となる可能性も高く、慎重な判断が求められる局面を迎える。
果たして、マレスカ監督にとっても欠かせない左サイドバックであるスペイン代表DFが、この夏の移籍マーケットでサウジアラビアに旅立ってしまう未来はあるのか。