懐かしい名前がイングランドに舞い戻ってくるかもしれない。セルビア代表ストライカーのアレクサンダル・ミトロヴィッチがプレミアリーグ復帰に向けてリンクされており、マンチェスター・ユナイテッド含め複数のクラブが獲得に関心を示している。
昨季のリーグ戦18敗という屈辱的な記録を背負うレッド・デビルズにとって、この夏の移籍市場は重要な意味を持つ。ルベン・アモリム監督の下で迎える新シーズンへの期待と不安が交錯する中、30歳のストライカーが持つ経験値と得点力が、オールド・トラッフォードの未来を左右する鍵となるかもしれない。
三つ巴の激戦、サウジマネーが生む複雑な構図
ミトロヴィッチを巡る争奪戦は、激しさを増している。マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、そしてニューカッスルの3クラブが参戦しており、元フルハムのストライカーの引き抜きを画策していると、英『Caught Offside』が報じた。
所属するアル・ヒラルは、マテウス・クーニャ、ブライアン・ムベウモ、ディエゴ・レオンを永続的に獲得したマンUの動きを尻目に、約3000万ユーロの移籍金を期待している。この金額設定には、現代移籍市場における選手の商業的価値と競技的価値のバランスが如実に現れている。
ニューカッスルの立場は特に興味深い。かつてフルハム時代とニューカッスル時代にプレミアリーグで猛威を振るったミトロヴィッチを、今度はサウジアラビア公的投資基金という共通の所有者を通じて獲得しようとしている。
一方、トッテナムにとってミトロヴィッチは、ドミニク・ソランケの代替案として位置付けられている。トーマス・フランク新監督にとって、センターフォワードの厚みを増すためにも、ミトロヴィッチの豊富な経験とフィジカルの強さは、新たな次元をもたらす可能性を秘めている。
アモリム監督の野望と現実的課題
ルベン・アモリム監督が2025年の展望について「非常に興奮している」と語った背景には、明確な戦術的ビジョンがある。ポルトガル人監督は、スポルティング時代に培った3-4-3システムを基軸とした攻撃的サッカーをオールド・トラッフォードで開花させようとしている。
しかし、現実は厳しい。マンチェスター・ユナイテッドは悲惨な2024-25シーズンを過ごし、プレミアリーグでわずか42ポイント（11勝9分18敗）を獲得し、15位でフィニッシュしたという事実は、単なる監督交代では解決できない構造的問題を示している。
クーニャは26歳、ムベウモは25歳だが、ミトロヴィッチは9月に31歳になる年齢的な懸念がある中で、アモリム監督は即戦力よりも長期的な視点での戦力構築を重視する傾向がある。来季はヨーロッパリーグへの出場権を逃したマンUにとって、スカッドのスリム化と若返りが急務となっている。
ミトロヴィッチのプレースタイルは、アモリム監督の戦術システムに興味深い化学反応をもたらす可能性がある。189cmの長身から繰り出される空中戦での圧倒的な強さ、ペナルティエリア内での嗅覚の鋭さ、そして両足から放たれるパワフルなシュートは、3-4-3システムの頂点に立つストライカーとして理想的な特徴を備えている。
サウジアラビアのアル・ヒラルでの2シーズンでは、79試合で68ゴールという圧巻の数字を残している。プレミアリーグとは競技レベルの違いがあるものの、この得点力は疑いようがない。特に、フルハム時代の2022-23シーズンには43試合で14ゴールを記録し、プレミアリーグでも十分に通用することを証明している。
昨季のプレミアリーグでわずか44ゴールしか奪えなかったマンUにとって、確実な得点源の確保は最優先課題であり、その課題を解決するためにもベテランフォワードが答えになる世界線もなくはない。
ただし、年齢という現実的な課題は無視できない。30歳という年齢は、長期的な投資としては疑問符が付く。アモリム監督が目指すスカッドの若返りという方針とは相反する側面もある。しかし、即戦力として機能し、若手選手の成長を促すメンターとしての役割も期待できる。
来シーズンへの期待と現実のギャップを埋めるため、マンチェスター・ユナイテッドはストライカー、守備的ミッドフィルダー、ゴールキーパーという3つのポジションでの補強を最優先事項としている。ミトロヴィッチの獲得が実現すれば、この夏の移籍戦略における重要なピースが完成することになる。
ミトロヴィッチがマンチェスター・ユナイテッド加わるのか、それとも一時的な騒音に終わってしまうのか。