エクアドル代表の若きDFピエロ・インカピエをめぐり、プレミアリーグの複数クラブが水面下で動いている。だが、そのなかで最も積極的な動きを見せているのはニューカッスル・ユナイテッドだと、スペイン紙『Fichajes』が伝えた。
財政力を背景に獲得を画策するマガパイズは、インカピエに4000万ユーロを投じる準備があると報じられている。だが、立ちはだかるのはバイエル・レバークーゼンの強硬な姿勢。クラブの守備戦略の要とされる23歳の放出は、現時点では極めて困難となる。
ニューカッスルの狙いとインカピエの価値
エディ・ハウ監督率いるニューカッスルは、今季のUEFAチャンピオンズリーグ出場に向けて、アンソニー・エランガらを獲得するなどチームの底上げに取り組んでいる。しかしその一方で、ダン・バーンやファビアン・シェアらセンターバック陣の世代交代が避けられない。
オランダ代表DFスヴェン・ボトマンらとともに、ニューカッスルの最終ラインをより強固なものにするためにも、白羽の矢を立てられたのがインカピエだ。エクアドル代表として国際経験も豊富な彼は、レバークーゼンでの3年間でブンデスリーガの激しいテンポにも適応。
シャビ・アロンソ前監督の下では、左CBのみならず左SBや3バックの一角としても起用され、その多様性が高く評価されてきた。
デュエルの強さに加え、前方への縦パス供給能力、そして後方からのビルドアップにおける冷静さ。攻守においてバランスの取れたインカピエの存在は、単なる守備者を超えた価値を持っている。ニューカッスルがこの夏、彼に大金を投じる準備をしているのも頷ける話だ。
レバークーゼンの意地と放出拒否の論理
だが、レバークーゼンの方針は明確。インカピエは今後のプランにとって極めて重要な存在であり、ヨナタン・ターの退団後に彼まで失う選択肢は考えられていない。ドイツのクラブは彼の契約解除条項を満たさない限り、いかなるオファーも受け入れる構えはない。
この強気な姿勢の背景には、レバークーゼンが欧州の舞台で確固たる地位を築こうとする中で、インカピエのような選手を軸にチームを再構築したいという戦略がある。昨季、彼は公式戦全体で30試合以上に出場し、対人守備での成功率は70%を超えたとされる。
さらに90分あたりのインターセプト数やロングパス成功率においてもブンデスリーガ屈指の数値を記録しており、その影響力は計り知れない。
また、インカピエ自身も現時点で移籍を強く望んでいる様子はない。エクアドル代表としてワールドカップ南米予選を控える中で、クラブレベルでの安定を優先する可能性が高い。
他クラブの静観とプレミアの行方
なお、プレミアリーグ内でもインカピエに目を向けていたクラブは少なくない。チェルシーはヨレル・ハトの獲得に集中しており、現時点でインカピエへのアプローチは考えていない。リバプールも守備ラインの強化を必要としているが、よりプレミア経験豊富なマルク・グエイに注目しており、トッテナムに至っては左サイドの人材がすでに充実している。
つまり、実際にインカピエ獲得レースに本腰を入れているのは、今のところニューカッスルだけ。それゆえに、彼らの熱意と投資意欲は際立つが、現実的な壁は厚い。
エディ・ハウ監督が思い描く理想のディフェンスラインに、インカピエのような多才なDFは理想的だろう。しかし、レバークーゼンの意志と、選手本人の去就に対する慎重な態度が揃えば、この移籍が成立する可能性は極めて低い。ニューカッスルは今後、ターゲットを絞り直す必要に迫られるかもしれない。