サウサンプトンの未来を背負うはずだった若者が、いまプレミアリーグの中堅クラブの注目を一身に集めている。21歳MFマテウス・フェルナンデスは昨季チャンピオンシップへの降格という厳しい現実を味わったにもかかわらず、その才能は霞むどころか、より鋭く輝きを放っている。
クリスタル・パレス、リーズ・ユナイテッド、そしてウェストハム・ユナイテッド。3つのクラブが獲得レースに参戦し、移籍金2000万ポンドという価格帯にも手応えを感じており、争奪戦が勃発していると、英『TEAMtalk』が伝えた。
フェルナンデスを狙う3つのクラブと交錯する思惑
サウサンプトンにとって、マテウス・フェルナンデスは降格後も売却を急がない数少ない資産だ。昨夏にスポルティングCPから加入し、クラブが混迷する中でも42試合に出場し、3ゴール6アシストというスタッツを記録。
数字以上に、そのプレーには明確な価値があった。広範な視野とクリーンなファーストタッチ、そして縦パス一本で局面を変える判断力。ゲームのテンポを読み、味方を活かす知性と、相手の急所に突き刺す技術を兼ね備えた若き司令塔は、サウサンプトンにとってまさに最後の砦とも言える存在だった。
そんなフェルナンデスに最も熱心なのが、クリスタル・パレス。エベレチ・エゼがアーセナルへの移籍に傾いているという背景があり、その代役として彼をターゲットに据えている。エゼのような攻撃的MFではないものの、中央からリズムを作れるフェルナンデスは、パレスの中盤再構築においてキーマンたり得る。
一方、リーズ・ユナイテッドはより明確に創造性を求めている。ダニエル・ファルケ体制の下でロングスタッフやスタッハといった守備的なMFは獲得したが、前進の起点を担うタイプが依然として不足している。フェルナンデスは、その隙間をぴたりと埋める存在だ。
そしてウェストハム・ユナイテッドは、カルロス・ソレールの退団を受けた穴埋めとして彼を見ている。ソレールほどの経験や得点力はまだないが、ボール保持と展開力においては若きフェルナンデスの方が将来性を感じさせる。ロンドンのクラブにとって、今が仕込みどきなのだ。
本命はあくまで「欧州ビッグクラブ」…揺れる決断
ただし、この一連の争奪戦には、根本的な不確実性が潜んでいる。それは、マテウス・フェルナンデス自身の希望が、これらのクラブとは異なる方向を向いている点。
彼はアトレティコ・マドリードやユベントスのような欧州のビッグクラブへの移籍を第一希望としており、今夏のプレミアリーグ移籍を「保留」しているという。つまり、彼にとってクリスタル・パレスやリーズ、ウェストハムは通過点にもなり得ない、ということだ。
この心理的背景は、交渉に大きな影響を与える。サウサンプトンとしては、2000万ポンドという移籍金は売却を促すには十分な額であり、クラブの財政健全化にもつながる。
しかし、本人がモチベーションを見いだせない移籍には応じない限り、取引は成立しない。フェルナンデスはまだ21歳。時間は彼の味方であり、1年クラブに残っても評価が下がるとは限らない。
このような状況の中、獲得を目指す3クラブに共通するのは若くて成熟したプレーメーカーを中盤に迎えたいというニーズ。ただしその思惑が実を結ぶかどうかは、選手本人のキャリア設計と野心、そして今後数週間のビッグクラブの動向次第となる。