キャリア再出発か、それとも終焉か?トーマス・パーテイがビジャレアル移籍に合意も蠢く闇

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キャリア再出発か、それとも終焉か?トーマス・パーテイがビジャレアル移籍に合意も蠢く闇 Arsenal

エミレーツ・スタジアムで167試合に出場し、中盤の底からアーセナルの屋台骨支え続けた男が、今スペインの地で再出発を図ろうとしている。だがその道のりは、かつてないほど険しく、重い。

32歳MFトーマス・パーテイは昨シーズン限りでアーセナルを退団し、フリーエージェントになっていた。そんな守備的ミッドフィルダーについて速報が舞い込んできた。英『The Athletic』によると、同選手はビジャレアルと2027年までの契約を結んだ。

かつてアトレティコ・マドリードから5000万ユーロの移籍金でアーセナル入りした守備的ミッドフィルダーは、4年間に渡ってアーセナルに在籍。激しいボール奪取と対人守備の強さ、そして的確なパス配給で、プレミアリーグの激戦を戦い抜いてきた。

2024-25シーズンには右サイドバックとしてもプレーしながら、公式戦52試合に出場。戦術的柔軟性と豊富な運動量は健在だった。だがその実績をもってしても、アーセナルとの契約延長交渉は合意に至らず、彼のキャリアは大きく方向を変えることとなる。

ビジャレアルが受け入れた、“リスクと能力”の等価交換

スペインのビジャレアルがパーテイの獲得に動いた背景には、明確な戦力補強の意図がある。ラ・リーガでの経験に加え、プレミアでの実績、そしてまだ衰えぬ守備力。クラブは彼の加入により、中盤のフィジカル強度と経験値を一気に底上げしようとしている。

加えて報じられているように、パーテイ自身が「チャンピオンズリーグでのプレー継続」を望んでいた点も、スペイン行きを後押しした。欧州の舞台で戦い続けたいという意志は、32歳という年齢を考慮しても、決して不思議ではない。

だがこの移籍には、もう一つの重大な側面がある。それが、法的リスクの存在だ。

2024年7月4日、パーテイはロンドン警視庁により、5件の強姦および1件の性的暴行容疑で正式に起訴された。事件の捜査は2022年2月から始まっており、クラブ側もその事実を把握していたとされる。それでも彼は契約満了までアーセナルでプレーを続けた。

現在、彼はすべての容疑を否認しており、8月5日にはウェストミンスター治安判事裁判所への出廷が予定されている。この裁判がキャリアに与える影響は極めて大きく、クラブとしても極めてデリケートな決断を迫られる状況となっている。

ビジャレアルがパーテイとの契約を結んだ背景には、彼が容疑を否定し続けていること、そして現時点で有罪判決が下されていないことが強く作用していると見られる。スポーツと倫理、無罪推定の原則、そしてクラブの勝利至上主義。そのすべてが交錯する難解な判断だった。

裁かれるのは実力か、道徳か――プレーする資格を問う時代

現代フットボールでは、選手が法的問題を抱えることが即座にクラブやリーグ全体に波及する。パーテイのケースも例外ではない。彼の加入に対しては、スペイン国内外で多くの賛否が巻き起こることが予想される。

過去にもフットボール界では、法的トラブルを抱えた選手が現役を続けるケースは存在した。しかし、性犯罪という性質上、メディアやファンの反応はより厳しくなるのが通例だ。ピッチ上のパフォーマンスだけでは、もうすべてを正当化できない。クラブが掲げる価値観、リーグのガイドライン、そして選手自身の説明責任が問われることになる。

ビジャレアルにとって、この移籍は純粋な戦力補強であると同時に、大きなリスクマネジメント案件でもある。パーテイがもし裁判で有罪となれば、その代償は計り知れない。だが彼が潔白を証明し、ピッチで再び輝きを放つことができれば、この移籍はクラブにとっても本人にとっても成功として語られることになるだろう。

パーテイの新たな挑戦は、サッカーという競技がどこまで倫理を内包できるのかという、現代スポーツの根源的な命題すら浮き彫りにしている。