カンプ・ノウに育まれた19歳の才能が、今まさに人生の岐路に立たされている。右サイドバックのエクトル・フォルトを巡って、バルセロナとアストン・ヴィラの間で繰り広げられる駆け引きは、現代フットボールが抱える構造的な問題を浮き彫りにしている。
クラブは彼を手放したがり、本人はブラウグラナのシャツに執着する。この食い違いが生み出すドラマは、多くのカンテラーノが経験してきた苦悩の縮図でもある。
エクトル・フォルトが直面する残酷な現実 – バルセロナでの出場機会という壁
ルシア・フォント記者が明かした内容は、フォルトにとって耳を塞ぎたくなるようなものだった。バルセロナの首脳陣は、この若き右サイドバックに対して新しいクラブを探すよう、はっきりと告げたのだ。
ハンジ・フリック体制における右サイドの序列は、もはや動かしがたいものになっている。ジュール・クンデが不動の存在として君臨し、エリック・ガルシアがその後ろに控える。驚くべきことに、ジェラール・マルティンでさえフォルトより上の扱いを受けているという現実がそこにはある。
19歳の若者にとって、これほど過酷な宣告があるだろうか。フォルト本人は「フリックのチームで十分戦えるクオリティがある」と自信を持っているが、技術スタッフの見解は冷ややかだ。右サイドバックのポジションには十分すぎるほどの選択肢があり、わざわざ経験不足の若手に賭ける必要はない、というのが彼らの本音なのだろう。
市場価値1000万ユーロと評価されるこの逸材にとって、今がキャリアの分水嶺となることは間違いない。カンプ・ノウで夢を追い続けることは美しい。
だが、ベンチを温め続けることで失われる成長の機会は、二度と取り戻せない。多くの先輩たちが通った道を、フォルトもまた歩まざるを得ないのか。ラ・マシアの理想と現実のギャップは、あまりにも大きい。
アストン・ヴィラが示す1500万ユーロの本気度
ウナイ・エメリ率いるアストン・ヴィラの動きは素早かった。バーミンガムの雄は1500万ユーロという破格のオファーを準備しているという。フォルトの市場価値を500万ユーロも上回るこの金額は、エメリがこの若者に賭ける覚悟の表れだ。
プレミアリーグでレギュラーとして起用される約束。これはカタルーニャでは絶対に得られない条件だ。毎週末、世界最高峰のリーグで実戦を積める環境は、若手にとって何よりの財産となる。エメリという名将の下で戦術を学び、フィジカルコンタクトの激しいイングランドで鍛えられれば、フォルトは間違いなく一回りも二回りも成長するはずだ。
パリFCなども虎視眈々と狙っているようだが、アストン・ヴィラの提案の具体性と魅力は群を抜いている。ジョアン・ラポルタ会長は市場価値以下での放出を拒否する構えだが、1500万ユーロという数字を前にすれば、さすがに首を縦に振らざるを得ないのではないか。
バルセロナの台所事情を考えれば、この取引は理にかなっている。クラブは貴重な収入源を確保し、選手は成長できる環境を手に入れる。誰も損をしない完璧なディールに見える。それでもなお、フォルトの心はカンプ・ノウから離れようとしない。彼の葛藤は、カンテラで育った者にしか分からない特別な感情に根ざしている。
育成クラブとしての側面も持つバルセロナが抱えるジレンマと、マネーゲームと化した移籍市場の現実を象徴している。エクトル・フォルトがどちらの道を選ぶにせよ、その決断は次世代のカンテラーノたちに大きな影響を与えることになる。