3年前、8500万ユーロという巨額投資でベンフィカから鳴り物入りで加入したダルウィン・ヌニェスの物語が、ついに最終章を迎えようとしている。アルネ・スロット監督のプレースタイルに合わず、ウルグアイの荒削りストライカーはアンフィールドでの居場所を完全に失った。わずか30試合で5ゴールという惨憺たる昨季の成績が示すように、リヴァプールの期待を背負った男は重圧に押し潰された格好だ。
ファブリツィオ・ロマーノが最新情報を投下。アル・ヒラルがヌニェスに具体的なプロジェクトと移籍プランを提示し、今後数日で金銭面の詳細について本格交渉が始まるという。
一方、ACミランも負けじとウルグアイ代表との直接対話を開始し、マッシミリアーノ・アッレグリ新監督の攻撃陣再建計画の中核に据える構想を描いている。7000万ポンドという法外な移籍金を巡る国際的な争奪戦が、いよいよ佳境を迎えた。
スロット監督にとって、ヌニェスは明らかに戦術に合わない選手だった。緻密なポジショナルプレーを要求するオランダ人指揮官の哲学に、カオティックな魅力を武器とするウルグアイ代表は根本的にフィットしなかった。
昨季はわずか8試合の先発出場に留まり、ベンチを温める時間の方が圧倒的に長かった現実が、すべてを物語っている。
ACミランが描くセリエA復活のシナリオ
ACミランの動きは極めて戦略的だ。ロッソネリは既にヌニェスとの直接対話を開始し、彼らの第一候補として位置づけている。アッレグリ新監督就任により、ミランは長年の得点不足解消を最優先課題に掲げており、ヌニェスの爆発力に大きな期待を寄せている。
ミランにとって最大の武器は、選手本人がヨーロッパ残留を強く希望していることだ。26歳という年齢を考慮すれば、キャリアのピークをサウジアラビアで過ごすことへの抵抗感は当然といえる。セリエAという新天地での再出発は、ヌニェスにとって理想的な環境を提供する可能性が高い。
特に注目すべきは、イタリアリーグの戦術的特徴がヌニェスの特性とマッチする点。プレミアリーグの激しいプレッシングに苦しんだウルグアイ代表も、セリエAのよりテクニカルで時間のある展開であれば、持ち前の決定力を存分に発揮できるかもしれない。
ミランのスカウト陣は、昨季後半戦でゴール前での嗅覚を見せたシーンを高く評価しており、適切な環境下での復活劇に大きな期待を抱いている。
ただし、ミランの財政状況は決して楽観視できない。リヴァプールが要求する7000万ポンドは、近年のミランの移籍戦略からすれば明らかに予算超過。そのため、ローン移籍プラス義務的買い取りオプションという複雑なスキームでの交渉が予想される。既に5000万ユーロ以上での提案を検討しているとされるが、最終的な合意に至るまでには相当な時間を要する可能性が高い。
アル・ヒラルの資金力と新戦略の威力
アル・ヒラルのアプローチは、ミランとは全く異なる次元での勝負となる。サウジプロリーグの雄は、年俸2000万ユーロから2500万ユーロという法外な条件を提示する用意があるとされ、ヌニェスの現在の年俸730万ポンドを大幅に上回る魅力的なパッケージを用意している。
特に重要なのは、アル・ヒラルがアレクサンダル・ミトロヴィッチより若くハングリーな選手への投資戦略にシフトしていることだ。ヴィクトル・オシムヘンやヴィクトル・ギェケレシュといった他の候補と比較しても、ヌニェスの年齢と潜在能力は魅力的な投資対象と映っている。
シモーネ・インザーギ新監督の要請により、アル・ヒラルは攻撃陣の大幅なテコ入れを計画している。クラブワールドカップでの戦いを控える中、世界的な知名度を持つ選手の獲得は単なる戦力補強を超えた戦略的意味を持つ。ヌニェスのような元リヴァプールのスター選手を獲得できれば、サウジプロリーグの国際的な威信向上にも大きく貢献することになる。
しかし、ヌニェス側の反応は複雑だ。リヴァプールのジャーナリスト、デイヴィッド・リンチ氏によると、選手本人に「サウジアラビアに行く意欲」があることは確認されているものの、最終的な決断はヨーロッパでのオプションを慎重に検討してからになるとされる。特に来年のワールドカップを控える中、国際舞台での露出機会を重視する可能性は十分にある。
リヴァプールにとって、ヌニェス売却で得られる資金はアレクサンデル・イサク獲得の原資となる。既にニューカッスルに1億1000万ポンドのオファーを提示したものの拒否されており、追加資金の確保が急務となっている。
ウーゴ・エキティケの獲得も既に完了しているが、スロット監督が求める完成度の高いストライカー像には、やはりイサクが最適解と判断されているようだ。
今週中にも状況が明確化されると予想される中、ヌニェスの選択がリヴァプール、ACミラン、アル・ヒラルの来季戦略を左右する重要な分岐点となることは間違いない。