セント・ジェームズ・パークに激震が走っている。アレクサンデル・イサクのリバプール移籍が現実味を帯びる中、ニューカッスル・ユナイテッドが水面下で進めてきたストライカー補強計画が、ついに具体的な段階へと突入した。
英『TBR Football』の独占情報によれば、マグパイズはパリ・サンジェルマンのランダル・コロ・ムアニ獲得に向けて本格的な交渉を開始。5000万ポンド以上という巨額の投資も辞さない構えで、プレミアリーグ上位への返り咲きを狙うエディ・ハウ監督の野心が鮮明になってきた。
コロ・ムアニがPSGで燻る理由とニューカッスルが見出す可能性
2023年夏に9000万ユーロという破格の移籍金でフランクフルトからPSGへ移籍したコロ・ムアニだが、パリでの2シーズンは決して順風満帆とは言えなかった。
ルイス・エンリケ体制下で出場機会を十分に得られず、今年1月にはユベントスへレンタル移籍。セリエAでこそ活躍したものの、飛躍したとは言い切れず、PSGは恒久移籍での放出を模索している状況だ。
英『TBR Football』の主任特派員グレアム・ベイリー氏によると、ニューカッスルはすでにPSG側とコロ・ムアニの代理人との協議を開始。興味深いのは、フランス代表FWが1月の時点でプレミアリーグへの移籍に前向きだったという事実。当時はトッテナムからのオファーを蹴ってユヴェントスを選んだが、イングランドでのプレーへの憧れは消えていなかったという。
26歳という年齢を考えれば、コロ・ムアニにとってこれが最後のビッグチャンスになる可能性もある。フランクフルト時代には2022-23シーズンにブンデスリーガで15ゴール11アシストという驚異的な数字を叩き出し、その破壊力は折り紙付き。
PSGでの不遇は戦術的な不適合によるもので、ハウ監督が構築する4-3-3システムでは、その機動力とフィニッシュ精度が最大限に発揮される可能性が高い。
実際、キリアン・エムバペはかつてコロ・ムアニを評して「非常に完成された選手」と語っている。パリでチームメイトだった現レアル・マドリードのスーパースターからの評価は、その実力の証明と言えるだろう。
PSGが要求する5000万ポンド以上という金額は決して安くないが、プレミアリーグの物価を考えれば、26歳の代表クラスのストライカーとしては妥当な投資と言える。
イサク退団後の戦術的空白を埋める豊富な選択肢
ニューカッスルがこれほどまでにストライカー補強を急ぐ背景には、エース・ストライカーであるイサクの去就問題がある。スウェーデン代表FWは今シーズンここまで好調を維持しているが、リバプールが虎視眈々と獲得を狙っており、契約延長交渉も膠着状態。クラブ側は最悪のシナリオに備えて、複数の代替案を用意している。
ベイリーの証言によれば、ニューカッスルには「この1週間で非常に多くの選択肢が提示された」という。コロ・ムアニ以外にも、ポルトで頭角を現しているサム・オモロディオンの名前が浮上。さらにチェルシーのニコラス・ジャクソン、アストン・ヴィラのオリー・ワトキンスといったプレミアリーグで実績のあるストライカーもリストアップされている。
特に注目すべきは、ヨアン・ウィッサの存在だ。レンヌから加入したフランス人アタッカーは、カラム・ウィルソンの後任として位置付けられており、イサクが残留した場合でも2トップの一角として計算されている。
つまり、ニューカッスルは単純にイサクの代替を探しているのではなく、攻撃陣全体の再構築を視野に入れているのだ。今夏の移籍市場でウーゴ・エキティケやベンヤミン・シェシュコといったビッグネームを逃した苦い経験も、今回の積極的なアプローチに繋がっている。
チェルシーとトッテナムもコロ・ムアニ獲得レースに参戦しており、争奪戦は熾烈を極めそう。しかし、ニューカッスルには明確なプロジェクトと、ハウ監督という若手育成に定評のある指揮官がいる。PSGで燻っているフランス代表FWにとって、再起を図る舞台としてこれ以上の環境はないかもしれない。
今後数週間の動向が、ニューカッスルの2025-26シーズンの命運を左右することになるだろう。サウジ資本による潤沢な資金力を背景に、マグパイズがどのような決断を下すのか。