ローマのスタディオ・オリンピコで、ひとりのベルギー人ウィングが静かに、しかし確実に自分の価値を証明していた。ACミランから期限付き移籍で加入した26歳のアレクシス・サレマーカーズは、わずか32試合で7ゴール7アシストという数字を叩き出し、イタリアサッカー界に改めてその才能を印象付けた。
そして今、その活躍に目を光らせていたのは、プレミアリーグの野心的なクラブ、アストン・ヴィラだった。イタリア紙『Tuttomercatoweb』と『MilanNews』の報道によれば、ヴィラパークを本拠地とするクラブは、サレマーカーズの獲得に向けて確固たる意志を固めている。
現時点で正式なオファーこそテーブルに載っていないものの、ヴィラ側は間違いなく前進する準備を整えており、ベルギー代表ウィングの動向を注意深く追っている状況。
サレマーカーズのローマでの覚醒が示すポテンシャル
2020年夏、RSCアンデルレヒトから1,090万ユーロという決して安くない金額でサン・シーロにやってきたサレマーカーズだったが、ミランでのキャリアは期待されたほど順風満帆ではなかった。近年は構想外の立場に追いやられ、まずボローニャ、そして昨季はローマへとレンタル移籍を重ねることになった。
しかし、ローマでの1年間は、サレマーカーズにとって真の意味でのターニングポイントとなった。セリエAという最高峰の舞台で、彼は持前のスピードと左足の精度を遺憾なく発揮。32試合という限られた出場機会の中で記録した7ゴール7アシストという数字は、単純計算で約2.3試合に1度は直接的にゴールに絡んでいることを意味する。
この効率性は、現代サッカーにおけるウィングプレイヤーに求められる決定力とクリエイティビティを兼ね備えていることの証明に他ならない。
特筆すべきは、マックス・アッレグリ新指揮官からも高い評価を受けていること。戦術的な規律と個人技のバランスを重視するアッレグリの目に適ったということは、サレマーカーズがただのスピードスターではなく、チーム戦術に溶け込める知性を持った選手であることを物語っている。
アストン・ヴィラが描く新戦力構想とサレマーカーズの適合性
アストン・ヴィラがサレマーカーズに熱視線を送る背景には、クラブの明確なビジョンがある。プレミアリーグという世界最高峰のリーグで上位進出を狙うヴィラにとって、サイドアタッカーの層の厚さは不可欠な要素だ。また、ヨーロッパリーグでも高みを目指すクラブにとって、長いシーズンを戦い抜くためのチームの充実は急務となっている。
サレマーカーズの持つ特徴は、まさにプレミアリーグのスタイルにマッチしている。彼の武器である縦への突破力は、スペースの限られたセリエAよりも、よりダイナミックな展開が期待できるイングランドの舞台でこそ真価を発揮する可能性が高い。
また、左サイドだけでなく右サイドでもプレイできるユーティリティ性は、ローテーションが重要な現代サッカーにおいて非常に価値の高い能力だ。
26歳という年齢も絶妙なタイミングだ。経験と体力のバランスが最も取れた年代であり、即戦力として計算できる一方で、まだまだ成長の余地も残されている。ミランでの出場機会に恵まれなかった悔しさをバネに、新天地で爆発的な活躍を見せる可能性は十分にある。
現在のミランにおけるサレマーカーズの立場は依然として不透明。ローマでの好パフォーマンスにもかかわらず、サン・シーロでのレギュラーポジション獲得への道筋は見えていない。この状況こそが、アストン・ヴィラにとって千載一遇のチャンスとなっている。有能な選手を適正価格で獲得できる機会は、移籍市場において決して多くはない。
イタリアメディアの報道が示すように、両クラブ間での具体的な交渉はまだ始まっていない段階だが、ヴィラ側の関心の高さは本物。サレマーカーズというダイヤモンドの原石を、プレミアリーグという舞台で輝かせることができるのか。