マンチェスター・ユナイテッドが、2023年夏にインテルから約4380万ポンドで獲得したアンドレ・オナナの後釜として、パリ・サンジェルマンのジャンルイジ・ドンナルンマ獲得に動いている。
英『TBR Football』のグラエム・ベイリー記者によると、マンチェスター・ユナイテッドだけではなく、同じくプレミアリーグからマンチェスター・シティやチェルシーも関心を示しているようだ。
昨季プレミアリーグ15位という屈辱的な成績に終わったユナイテッド。今夏すでにマテウス・クーニャを6250万ポンドでウルヴァーハンプトンから獲得し、ブライアン・ムベンモやベンヤミン・シェシュコもチームに迎え入れたが、まだ補強は終わっていない。最後尾の要であるGKポジションにメスを入れようとしている。
マンチェスター・ユナイテッドが描くGK補強の青写真
オナナのオールド・トラフォードでの2シーズンは、期待と現実のギャップに苦しんだ日々だった。足元の技術を武器にビルドアップに貢献する現代的なGKとして期待されたカメルーン代表だが、プレミアリーグの激しいプレッシャーの前では、その長所が時に短所に転じることもあった。
特に印象的だったのは、チャンピオンズリーグでのバイエルン・ミュンヘン戦やガラタサライ戦での致命的なミス、そして5月のヨーロッパリーグ決勝でトッテナムに敗れた試合でのポジショニングミスだ。
2023-24シーズン以降、オナナのミスから生まれた失点は8つ。これはプレミアリーグのGKの中でブライトンのバルト・フェルブルッヘンに次いで2番目に多い数字だ。クラブ側もその状況を深刻に受け止めており、ドンナルンマだけでなく、アストン・ヴィラのエミリアーノ・マルティネスやACミランのマイク・メニャンにも関心を示している。
モナコがオナナ獲得に動いているという報道もあり、新たな正GKを獲得した暁には、オナナの放出も現実味を帯びてきている。
ドンナルンマといえば、26歳にして既にイタリア代表の正守護神として欧州選手権優勝の立役者となった世界屈指のGKだ。チャンピオンズリーグではPSGの優勝に大きく貢献し、UEFAチーム・オブ・ザ・シーズンにも選出された。
196センチの恵まれた体格から繰り出される圧倒的なセービング能力、そして若くして培った豊富な経験。PSGがリールからリュカ・シュヴァリエを獲得し、ポジション争いが激化している今こそ、ユナイテッドにとって千載一遇のチャンスなのかもしれない。
ドンナルンマ獲得の現実性と立ちはだかる壁
しかし、この移籍話には複雑な要素が絡み合っている。まず契約状況。ドンナルンマのPSGとの契約は2026年まで残っており、6月には本人が「PSG残留が最優先」と語っていた。だが、シュヴァリエの加入により状況は流動的になっている。
興味深いのは、ユナイテッドがすでにドンナルンマの代理人エンツォ・ライオラに接触していること。ユナイテッドはドンナルンマ獲得にチャンスを見出しており、インテル・ミラノと共に獲得レースの最前線にいるという。
だが、ライバルクラブの存在も無視できない。マンチェスター・シティはエデルソンの後継者探しを始めており、チェルシー、ユヴェントスも虎視眈々と狙っている。特にシティは資金力で勝る隣人であり、争奪戦になれば不利になる可能性も否定できない。
ユナイテッドのルベン・アモリム監督にとって、この決断は今後のチーム作りを左右する重要な分岐点となる。最近のインタビューでアモリムは「オナナは今季もっと良くなる」と語り、現有戦力への信頼を示していた。しかし、プレミアリーグ史上最悪の15位という成績から立ち直るためには、時に大胆な決断も必要になる。
実は、ユナイテッドとドンナルンマの縁は今に始まったことではない。2015年、まだ16歳だったドンナルンマに対し、当時の代理人ミノ・ライオラは1億4300万ポンドという途方もない金額を要求していた。あれから10年、ようやく現実的な価格で獲得できる可能性が出てきたのだ。
個人的な見解
この移籍話はユナイテッドの復活にとって極めて重要な意味を持つと考えている。確かにオナナは優れたGKだが、プレミアリーグの激しさ、そして毎試合のようにプレッシャーがかかるユナイテッドというビッグクラブで、安定したパフォーマンスを発揮できているとは言い難い。
元セルビア代表のネマニャ・マティッチが「ユナイテッド史上最悪のGKの一人」と酷評したのは極端だが、ファンの不満が高まっているのは事実だ。
ドンナルンマの獲得は、GKポジションの強化だけでなく、チーム全体に勝者のメンタリティーをもたらす可能性がある。チャンピオンズリーグ優勝という最高の舞台で結果を残した選手の存在は、どん底から這い上がろうとするチームにとって、精神的支柱となるはず。
今夏の移籍市場は9月1日まで続く。果たしてオールド・トラフォードに新たな守護神が誕生するのか、それともオナナが巻き返しを図るのか。赤い悪魔の未来を占う重要な数週間が続くことになりそうだ。