9年ぶりのプレミアリーグ復帰を果たしたサンダーランドが、トップリーグ残留に向けた本格的な守備補強に動き出した。レジス・ル・ブリス監督率いるブラックキャッツが狙いを定めるのは、ラ・リーガの堅守として名を馳せるヘタフェのオマル・アルデレーテ。28歳のパラグアイ代表センターバックを巡る争奪戦は、思わぬ展開を見せている。
5月のプレーオフ決勝でシェフィールド・ユナイテッドを劇的な逆転で下し、悲願のプレミアリーグ復帰を成し遂げたサンダーランド。しかし、世界最高峰のリーグで戦い抜くには、現在の戦力では不安が残る。
特にセンターバックの層の薄さは深刻で、プレミアリーグの激しいフィジカルコンタクトに対応できる経験豊富な選手の獲得が急務となっている。ル・ブリス監督にとって、移籍市場が閉まる前のセンターバック獲得は待ったなしの最優先課題だ。
サンダーランドがアルデレーテ獲得に向け交渉加速
イタリア人ジャーナリストのルカ・ベンドーニが伝えるところによると、サンダーランドはアルデレーテとの契約に向けて交渉で著しい進展を見せているという。この報道が事実であれば、ブラックキャッツにとって今夏最大の補強が現実味を帯びてきたことになる。
アルデレーテの魅力は、何よりもその豊富な実戦経験にある。昨シーズンはヘタフェで34試合に出場し、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、レアル・マドリードといったスペインの強豪クラブと渡り合ってきた。ラ・リーガという世界最高峰のリーグで鍛え上げられた守備技術は、プレミアリーグでも十分に通用するレベルだ。
特筆すべきは、アルデレーテの戦術的な適応力の高さである。ヘタフェは典型的な守備的なチームとして知られているが、彼はそのシステムの中で中心的な役割を果たしてきた。高いポジショニング能力と的確な読み、そして激しいプレッシャー下でも冷静さを失わない判断力は、プレミアリーグ残留を目指すサンダーランドにとって理想的な補強となるはずだ。
ただし、交渉には複雑な要素が絡んでいる。アルデレーテはヘタフェとの契約が残り3年も残っており、スペインクラブ側も主力選手を簡単に手放すつもりはない。サンダーランドがどの程度の移籍金を用意できるかが、交渉の成否を分ける重要なファクターとなるだろう。
当初、サンダーランドが第一候補として狙っていたのはボローニャのジョン・ルクミだった。しかし、イタリアのクラブ側が取引に乗り気でないため、アルデレーテへのターゲット変更は戦略的な判断といえる。ラ・リーガからプレミアリーグへの移籍という点で、金銭面でも現実的なオプションかもしれない。
プレミアリーグクラブとの争奪戦が激化
しかし、サンダーランドの前に立ちはだかるのが、同じプレミアリーグのクリスタル・パレスの存在だ。オリバー・グラスナー監督率いるイーグルスも、アルデレーテに強い関心を示している。これは単なる噂ではなく、クリスタル・パレス側にも切実な事情がある。
クリスタル・パレスの守備陣を見渡すと、マルク・グエイの去就が不透明な状況が続いている。イングランド代表経験もある25歳のセンターバックは、リバプールやニューカッスルといったより大きなクラブからの関心も囁かれており、セルハースト・パークを去る可能性も否定できない。グエイが移籍すれば、クリスタル・パレスは即座に代替選手を見つける必要に迫られる。
昇格クラブと既存のプレミアリーグクラブの争奪戦という構図は、選手にとっても悩ましい選択となる。クリスタルパレスを選べば安定したプレミアリーグでのキャリアを継続できる一方、サンダーランドを選択すればプレミアリーグ復帰を成し遂げたクラブでの新たな挑戦となる。
ただし、サンダーランドでレギュラーポジションを確実に掴める可能性は高く、選手のキャリア設計次第では魅力的な選択肢でもある。
興味深いことに、アルデレーテはボーンマスからもオファーを受けたとされるが、チェリーズ側は彼の獲得を優先事項とは考えていないという。この情報が正確であれば、実質的にはサンダーランドとクリスタルパレスの一騎打ちという構図が浮かび上がる。
サンダーランドの移籍戦略で注目すべきは、全ての卵を一つのカゴに入れていない点だ。アルデレーテ獲得に全力を注ぎながらも、フィオレンティーナのピエトロ・コムッツォなど、他のセンターバック候補への関心も維持している。
プレミアリーグ残留への本気度を示す象徴的な移籍となる可能性が高く、クラブの今後を占う重要な分岐点となりそうだ。9年ぶりのトップフライト復帰を果たしたル・ブリス監督の手腕が試される正念場が、いよいよ近づいている。