トーマス・フランク監督就任から2ヶ月、トッテナム・ホットスパーの夏の移籍戦略が具体的な形を見せ始めた。ファブリツィオ・ロマーノが10日に報じた通り、フランク監督がサヴィーニョを理想の選手と評価し、マンチェスター・シティとの正式交渉が開始された。
🚨⚪️ EXCL: Tottenham open club to club talks to sign Savinho from Man City!
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 10, 2025
Negotiations ongoing between Spurs and City, also understand Savinho’s open to the move if the clubs can agree on fee.#THFC boss Thomas Frank indicated Savinho as ideal player.@MatteMoretto 🫱🏻🫲🏽 pic.twitter.com/4n1vD2sXUF
ソン・フンミンのLAFC移籍完了とジェームズ・マディソンの前十字靭帯断裂という二重の打撃を受けたスパーズにとって、この5000万ユーロの投資は運命を左右する決断となる。
CFGの育成システムを経た21歳のブラジル代表ウィンガーは、ジローナでの11ゴール10アシストという輝かしい実績を持ちながら、シティでは今季48試合3ゴールと物足りない成績に終わった。しかし、この数字の裏側に隠された戦術的価値と成長可能性こそ、フランク監督が見抜いた真の魅力なのだ。
フランク体制下での戦術的革命
6月にブレントフォードから招聘されたフランク監督にとって、サヴィーニョは自身の戦術構想における中核的存在となる。ブレントフォード時代から一貫して見せてきた若手育成の手腕は、イヴァン・トニーやブライアン・ムベウモの覚醒で実証済みだ。サヴィーニョの多様性は、まさにフランク・フットボールの理想形を体現している。
左利きの技巧派ウィンガーとして右サイドからカットインする局面では、相手の重心を巧みに操るダイナミックなドリブルで数的優位を創出する。ジローナでの成功体験は、戦術的自由度の高い環境での爆発力を証明しており、フランク監督の柔軟なシステムは最適な舞台を提供できる。
マディソンの長期離脱により露呈した創造性不足に対し、サヴィーニョの右ウィング起用とモハメド・クドゥスのトップ下転換は斬新な解決策となる。ガーナ代表でのクドゥスのプレーメイク経験は、この配置転換の実現可能性を裏付けている。
5000万ユーロ投資の戦略的意味
ソン・フンミンの退団により約38億円の移籍金を手にしたスパーズにとって、サヴィーニョ獲得の5000万ユーロは投資回収の絶好機だ。年齢差を考慮すれば、33歳のソンから21歳のサヴィーニョへの世代交代は必然的な流れといえる。
ペップ・グアルディオラが退団希望選手を引き留めない方針を持つことは周知の事実であり、サヴィーニョ自身もスパーズ移籍に前向きな姿勢を示している。シティにとっても、CFGシステムで育成した選手の適正価値を市場に示す重要な取引となる。
しかし、即戦力を求める声も根強い。現有戦力としてマティス・テル、ウィルソン・オドベール、ブレナン・ジョンソンなど豊富なウィンガー陣を抱えるスパーズが、さらなる若手投資に踏み切る理由は明確だ。サヴィーニョの持つ決定的な違いは、ゲームを変える瞬発力にある。
CFGの厳格な戦術教育を受けながらも、ブラジル人らしい創造性を保持した稀有な選手として、現代サッカーにおける理想的なハイブリッド型タレントの典型例だ。リーグ戦での低調な成績は、むしろペップの求める規律と忍耐力を身につけた証拠として解釈できる。
新時代スパーズの象徴的移籍
この交渉が持つ意義は、スパーズの補強哲学における明確な転換点を示している。即戦力中心から育成型投資へのシフトは、長期的な競争力構築を目指すクラブの意志表明だ。フランク監督の育成手腕への信頼なくして、この決断は下せない。
ブラジル代表として13試合1ゴールという実績も、21歳という年齢を考慮すれば今後の成長余地は計り知れない。サヴィーニョが秘める爆発力が、N17の地で開花する瞬間が待ち遠しい。
個人的な見解
この移籍はスパーズの将来を左右する優れた決断になると確信している。フランク監督の戦術眼と育成能力は疑いようがなく、サヴィーニョの持つ潜在能力を最大限に引き出せる指揮官だ。
CFGの育成プロセスで基礎を固め、ジローナで自由度の高いプレーを経験した彼のような選手は、現代フットボールにおいて極めて貴重な存在だ。
5000万ユーロという投資額は決して安くないが、今後10年間でプレミアリーグを代表するウィンガーに成長する可能性を秘めた選手を、この価格で獲得できる機会は二度とない。ソンという偉大なレジェンドの後継者として、サヴィーニョがスパーズの新たな時代を切り開く姿を見届けたい。マディソンの負傷という不運から生まれたこの補強計画が、結果的にクラブの未来を明るく照らす転機となることを期待している。