キャリアの分岐点に立つ男の心境は複雑だった。かつてチェルシーの未来と呼ばれ、今やノッティンガム・フォレストで真の輝きを取り戻したカラム・ハドソン=オドイに、トルコの名門ベシクタシュが熱視線を送っている。
契約残り1年という微妙なタイミングで浮上した移籍話は、24歳のウインガーにとって単なる金銭的な判断を超えた人生の選択となりそうだ。
ベシクタシュが仕掛けるハドソン=オドイ争奪戦の真相
信頼できる移籍専門ジャーナリストのSacha Tavolieri氏が報じたところによると、ベシクタシュはハドソン=オドイをこの夏の最優先ターゲットに設定し、すでに選手サイドとの交渉を開始している。
🇹🇷 ⚪️ 🦅 Besiktas JK defined Callum Hudson-Odoi has a priority target for this window.
— Sacha Tavolieri (@sachatavolieri) August 13, 2025
🗣️ Talks already took place with player side to convince the winger & Nottingham Forest can consider to sell him but…
🏴 Hudson-Odoi happy in and keen to stay in Premier League yet. #NFFC… pic.twitter.com/GcRVVe4GbC
オーレ・グンナー・スールシャールが指揮を執るトルコの黒鷲は、攻撃陣の強化を急務としており、プレミアリーグで復活を遂げた英国人ウインガーこそが理想的な補強と判断した。
現在のハドソン=オドイは市場価値2500万ユーロと評価されているが、契約が2026年6月30日までという状況がベシクタシュにとって絶好の機会となっている。
フォレストとしても、来夏にフリートランスファーで失うリスクを考慮すれば、今夏の売却も現実的な選択肢だ。特に、クラブがストラスブールのディラン・バクワ獲得に向けて3100万ユーロの2度目のオファーを提出している状況を考えると、資金調達の必要性は明らかである。
ベシクタシュのアプローチは戦略的かつ粘り強い。スールシャールは自身のプレミアリーグでの豊富な経験を武器に、ハドソン=オドイの心を動かそうとしている。トルコリーグでのチャレンジは、選手にとって新たな成長の機会であり、欧州カップ戦での活躍も約束されている。しかし、ここに大きな障壁が立ちはだかる。
プレミアリーグ愛が生む契約交渉の膠着状態
ハドソン=オドイの心はプレミアリーグにある。これはいわゆる推測ではなく、複数の情報源が一致して報告している事実。シティ・グラウンドでの2シーズンは、彼にとってキャリア最高の時期となった。チェルシー時代の不完全燃焼、バイエル・レバークーゼンでの不本意なローン期間を経て、ようやく見つけた居場所での充実感は計り知れない。
昨シーズンの統計が物語るその価値は圧倒的だ。プレミアリーグ31試合に出場し、5ゴール3アシストを記録。特に印象的だったのは、2月の3試合連続ゴール(ボーンマス戦、ニューカッスル戦、ウェストハム戦)と、5月4日のシェフィールド・ユナイテッド戦での2ゴールによる残留確定への貢献だった。
そして何より象徴的だったのは、昨年9月14日のアンフィールドでのリバプール戦1-0勝利での決勝ゴール。フォレストにとって1969年2月以来のアンフィールド勝利をもたらしたこの一撃は、彼がクラブにとってかけがえのない存在であることを証明した。
しかし、契約交渉は停滞している。7月にはアテネでクラブ幹部と代理人による会談が行われたものの、具体的な進展は見られていない。週給8万ポンドという現在の条件から、どの程度の改善が提示されるかが焦点となっているが、フォレスト側も慎重な姿勢を崩していない。
ヌーノ・エスピリト・サント監督にとって、ハドソン=オドイの去就は戦術的にも精神的にも重要な意味を持つ。アンソニー・エランガがニューカッスルに5500万ポンドで移籍した今、左ウイングの主力を失うことは避けたいところだ。新加入のダン・エンドイェが右ウイングでの起用が予想される中、左サイドのクリエイティビティを担うハドソン=オドイの存在感は増している。
個人的な見解
この移籍話を冷静に分析すると、ハドソン=オドイにとって極めて難しい決断が迫っていることが分かる。ベシクタシュのオファーは経済面では魅力的だろうし、ソルシャールという実績ある指導者の下でのプレーは確実に成長をもたらすはずだ。しかし、プレミアリーグでようやく掴んだ地位を手放すリスクも大きい。
個人的には、ハドソン=オドイはフォレストに残るべきだと考える。彼はまだ24歳であり、プレミアリーグでのキャリアはこれからが本番。来季はヨーロッパリーグという新たな舞台も待っており、そこでの活躍次第では代表復帰の道も開かれる。チェルシー時代に果たせなかった真の評価を、フォレストで確立するチャンスが目の前にあるのだ。
一方で、フォレスト側も現実的な判断が求められる。契約最終年の選手を引き留めるには相応の条件提示が必要であり、バクワ獲得への資金調達という課題も抱えている。
ただし、ハドソン=オドイを売却してバクワを獲得するという単純な等価交換では、戦力的にマイナスになる可能性が高い。むしろ両選手の共存によるウイング陣の層厚化こそが、来季の飛躍につながる道筋ではないだろうか。この夏の決断が、クラブの未来を大きく左右することは間違いない。