オールド・トラッフォードでもはや居場所を失ったジェイドン・サンチョに、劇的な転機が訪れた。ASローマが25歳のイングランド代表ウィンガーに対し、正式なオファーが提示されたことが、ファブリツィオ・ロマーノ氏の報道で明らかになった。
サンチョの今夏の去就を巡っては、チェルシーが2500万ポンドのバイアウト条項を蹴飛ばしたことで、マンチェスター・ユナイテッドへの逆戻りが確定した。しかし、ルベン・アモリム監督の構想外である現実は変わらず、クラブ側も給与削減とタレント放出を血眼になって進めている。
ロマーノ氏は付け加えて、ローマは完全移籍で2000万ポンド、もしくはバイアウト条項付きローンでの獲得を検討しているとも伝えている。一方、ユナイテッド側は契約が2026年夏に切れることを踏まえ、完全移籍を死守したい構えだ。
ガスペリーニ監督がサンチョ獲得に燃える戦術的な深謀
新シーズンからローマの指揮を執るジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督にとって、サンチョの獲得はただの補強を超越した戦術的な生命線となっている。アタランタで磨き上げた3-4-2-1システムをローマでも貫く名将は、両サイドハーフの位置で機能する創造性豊かなアタッカーを喉から手が出るほど欲している。
サンチョが誇るカットインからのシュート能力と、密集地帯でのテクニカルな局面打開力は、ガスペリーニが志向するポジショナルプレーと完璧に噛み合う。特に左サイドの攻撃的ミッドフィールダーとしてのポジションは、現在のローマにとって喫緊の悩みの種となっており、サンチョがその巨大な穴を埋める救世主として浮上した。
ローマの移籍戦略を熟知する関係者によれば、クラブはサンチョと併せてアストン・ヴィラのレオン・ベイリーの獲得も血眼になって追っている。これは選択肢の分散ではなく、両選手の同時獲得を狙う野心的なプランの核心部分だ。ガスペリーニ監督は攻撃陣のバリエーション向上に執念を燃やしており、サンチョの獲得が実現すれば、セリエAでも屈指の攻撃力を誇るマシンへの大変身が現実味を帯びる。
🚨🟡🔴 AS Roma submit official bid to Manchester United to sign Jadon Sancho.
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 14, 2025
Permanent move for £20m offered while club’s also open to loan with buy clause.
Decision up to Manchester United and Sancho’s camp.
🔀 AS Roma, in contact with both Sancho and Bailey. pic.twitter.com/wq4B6MV4ha
ユヴェントスとの火花散る争奪戦、サンチョの心中に描く青写真
しかし、ローマの前に巨大な壁として立ちはだかるのがユヴェントスの存在。トリノの古豪は既にサンチョ側と個人合意に漕ぎ着けたとの情報が飛び交い、年俸600万ユーロの4年契約で基本合意を果たしている。
ユヴェントスはマンチェスター・ユナイテッドに対し1000万ユーロ+ボーナス500万ユーロの札束を積み上げており、ローマより一歩も二歩もリードしている展開。
驚愕すべきは、サンチョ自身がこれまでの移籍打診を片っ端から叩き返してきた頑固な姿勢。ベシクタシュからのラブコールも一蹴し、明らかにクラブを厳選している。この鉄壁な態度は、給与面の問題を凌駕して、自身のキャリアビジョンに対する揺るぎない信念を物語っている。
ドルトムント時代に魅せた圧巻のパフォーマンスを知るサンチョにとって、次の移籍先選びは人生を左右する重大な分水嶺となる。プレミアリーグでは苦汁を舐めさせられたものの、ブンデスリーガでは2シーズンで38ゴール40アシストという化け物じみた数字を叩き出した実績がある。
セリエAへの挑戦は、技術重視のリーグ特性を考慮すれば、サンチョの持つ能力を爆発的に開花させる舞台となる可能性を大いに秘めている。ローマかユヴェントスか、はたまた他クラブからの新たなビッグオファーが舞い込むのか。移籍期限まで残り2週間を切った中で、サンチョの重大決断に全世界の視線が釘付けになっている。
個人的な見解
サンチョのケースは特に心を揺さぶる事例だ。7300万ポンドという天文学的な移籍金でユナイテッドに加入しながら、期待を裏切り続けてここまで追い込まれた選手は稀有。しかし、この絶望的な状況だからこそ浮き彫りになる活路もある。
セリエAは間違いなくサンチョにとって理想的な場だ。プレミアリーグの野獣的なプレッシングとフィジカルバトルに翻弄された彼にとって、よりテクニカルで戦術的なイタリアサッカーは才能を解き放つ約束の地となる。
ローマのガスペリーニ監督もユヴェントスのトゥドール監督も、選手の個性を最大限引き出すことで名を馳せており、どちらのクラブでもサンチョの復活劇が現実的に描ける環境が整っている。
サンチョがこれまでの移籍打診を頑なに拒み続けている事実。これは我儘ではなく、自身のキャリアを真剣に見つめている証拠でもある。
25歳という年齢を考慮すれば、次の移籍先での成功が今後のキャリア全体を決定づける。その意味で、慎重になるのは当然の判断だ。
ローマとユベントス、どちらを選んでもセリエAでの大成功は現実的だが、個人的にはガスペリーニ監督の戦術的な手腕に大きな期待を寄せている。アタランタで見せた選手育成の魔法は卓越しており、サンチョの新境地開拓には最高の指導者だと確信している。