プレミアリーグの無慈悲な現実が、またひとりの才能ある選手を飲み込もうとしている。エドソン・アルバレスというメキシコの心臓部を支える男が、わずか2年でウェストハムを去ることになりそうだ。
2023年夏、3500万ポンドという決して安くない移籍金でアヤックスから鳴り物入りで加入した27歳のミッドフィルダーは、ロンドンスタジアムで思い描いた活躍を見せることができなかった。
フランス人ジャーナリストのセバスティアン・ヴィダル氏によると、ウェストハムはアルバレスを2025/26シーズンの構想から完全に外し、今夏の放出を決定したという。
アヤックス復帰への道筋とモナコの野心
アルバレス争奪戦の最有力候補として名前が挙がっているのは、彼の古巣であるアヤックスと、リーグ・アンのASモナコだ。さらに、セバスティアン・ヴィダル氏の報道ではASローマも参戦しているとされ、移籍レースは三つ巴の様相を呈している。
Edson Álvarez (27 ans) n’entre plus dans les plans de West Ham. L’Ajax et l’AS Monaco sont en pôle pour recruter le milieu mexicain cet été. #Mercato #WHUFC #Ligue1 #ASM #Monaco
— Sébastien Vidal (@SebEcrivainFoot) August 17, 2025
アヤックスにとって、アルバレスは決して忘れることのできない存在である。2019年から2023年まで4年間にわたってエールディビジで中盤を支配し続けた彼の復帰は、クラブにとって理想的なシナリオだ。ジョニー・ハイティンガ監督は今夏の補強で中盤の再構築を最優先課題に掲げており、アルバレスの獲得は戦術的な観点からも合理的な判断である。
アムステルダムでの4年間で培った戦術理解と、プレミアリーグで得た貴重な経験を兼ね備えた彼なら、即戦力として機能することは間違いない。アヤックスの財政状況には不安要素もあるが、クラブ関係者はアルバレス獲得に向けて本格的な動きを見せている。
一方、ASモナコのアディ・ヒュッター監督も守備的ミッドフィルダーの補強を急務としており、アルバレス獲得に向けて執念を燃やしている。モナコの財政力とチャンピオンズリーグ参戦権という魅力は、選手にとって非常に魅力的な提案となるはずだ。実際、今年1月にもローン移籍のオファーを提示していたほど、モナコの関心度は高い。
プレミアでの挫折から学んだ教訓
ウェストハムでの50試合出場、2ゴール3アシストという数字は、決して満足のいくものではなかった。しかし、この経験がアルバレスにとって無駄だったわけではない。プレミアリーグの激しいフィジカルコンタクトと高いテンポに適応する過程で、彼は確実に成長を遂げている。
アヤックス時代には見せることのなかった献身的な守備意識や、相手プレスへの対応力は明らかに向上している。ウェストハムのファンからは物足りなさを指摘される声もあったが、戦術的な理解度とポジショニングの精度は間違いなく磨かれた。これらの要素は、次のクラブでの成功に直結する貴重な財産だ。
メキシコ代表としても不動のレギュラーポジションを維持し続けていることは、彼の真の実力を物語っている。国際舞台での安定したパフォーマンスは、クラブレベルでの一時的な低迷を補って余りある証拠である。2026年ワールドカップが自国開催となることも、彼にとっては大きなモチベーションとなっているはず。
なお、ウェストハムは後釜としてLOSCリールの20歳、エンガラエル・ムカウに注目しているとの報道もある。コンゴ代表の若きタレントが、アルバレスの穴を埋める存在として期待されている。
個人的な見解
アルバレスの移籍劇を見ていると、現代サッカーの移籍市場の残酷さと同時に、選手にとってのセカンドチャンスの重要性を痛感する。
プレミアリーグという世界最高峰のリーグで結果を残せなかったからといって、彼の価値が失われるわけではない。つい先月のゴールドカップでの活躍が、その証明だ。メキシコ代表キャプテンとして決勝ゴールを決め、大会最優秀選手に輝いた姿は、本来の彼の実力を如実に示している。
アヤックス復帰が実現した場合、彼はエールディビジで再び輝きを放つことができるはずだ。慣れ親しんだ環境と戦術システムの中で、再び本来のパフォーマンスを発揮できる可能性が高い。
一方で、ASモナコ移籍となれば、リーグ・アンという新たな舞台での挑戦となり、チャンピオンズリーグという最高峰の舞台で腕を試すチャンスも得られる。
どちらの選択肢も魅力的だが、個人的にはアヤックス復帰の方が彼にとって理想的だと考えている。いずれにせよ、アルバレスの次なる挑戦がメキシコサッカー界全体にとってもプラスになることを期待したい。