ニューカッスル・ユナイテッドがブレントフォードに対し、ヨアネ・ウィサ獲得のために4000万ポンドという大台に乗せたオファーを提示したにも関わらず、ビーズは冷たくこれを拒絶。
この28歳のDRコンゴ代表ストライカーが、いかに貴重な存在かを改めて世に知らしめる結果となった。昨シーズン19ゴールの大爆発を見せたウィサ本人は、セント・ジェームズ・パークでの新天地を強く望んでいるが、移籍実現への道のりは想像以上に険しい。
英『The Athletic』のDavid Ornstein氏が報じた詳細によると、マグパイズが今回提示した内容は基本額3500万ポンドに、達成困難な条件のアドオン500万ポンドを組み合わせたもの。
7月22日に弾き返された2500万ポンドから大幅にアップした金額だったが、ブレントフォード側の反応は素っ気ないものだった。ビーズは一切の具体的な希望額を示していない。これは戦略的な沈黙なのか、それとも絶対に手放したくない意思表示なのか、読み解くのは容易ではない。
イサクの衝撃告白がもたらした新展開
エディ・ハウ監督の頭を悩ませているのは、攻撃陣の深刻な人材不足だ。アレクサンダー・イサクが火曜日にソーシャルメディアで爆弾発言を投下し、「クラブとの関係継続は不可能」と公言したことで、ニューカッスルの窮状は一気に表面化した。スウェーデン代表エースの退団意思表明により、ウィサ獲得は単なる補強から必須プロジェクトへと格上げされた格好。
マグパイズの移籍戦略は、この夏ことごとく頓挫している。フランクフルトのウーゴ・エキティケはリバプールに横取りされ、ジョアン・ペドロとリアム・デラップはチェルシーの手に落ち、ベンヤミン・シャシュコはマンチェスター・ユナイテッドが掻っ攫っていった。選択肢が次々と潰れていく中、ウィサは残り少ない現実的なターゲットの筆頭格となっている。
ウィサの真価は、ゴール数だけに留まらない多面性にある。2021年のロリアン時代から積み上げてきた149試合49ゴール13アシストの実績もさることながら、左サイドから鋭角にカットインしていく独特のスタイル、ボックス内での嗅覚、そして勝負どころで確実に仕事をこなす勝負強さ。ブライアン・ムベウモとの強力コンビは昨シーズン、ブレントフォード全66ゴールの実に39ゴールを産み出し、チーム躍進の原動力となった。
ビーズが構築する鉄壁の防御線
ブレントフォードの立場から見れば、今夏の大量流出は悪夢そのもの。トーマス・フランク監督とコーチングスタッフ3名がトッテナム・ホットスパーに引き抜かれ、主将クリスチャン・ノアゴールはアーセナルに去り、攻撃の要ムベウモもマンチェスター・ユナイテッドに7100万ポンドで売却された。これ以上の戦力流出は、プレミアリーグ生き残りそのものを危険に晒しかねない。
ウィサは現行契約の残り期間が1年となっており、ブレントフォードが12ヶ月の延長オプションを保持している。この契約構造が、ビーズに強気の交渉姿勢を支える根拠となっているのは明らか。それでもウィサがポルトガルでの事前合宿を途中離脱し、クラブ幹部との直接会談に臨んだ事実は、選手サイドの移籍への欲望を露わにしている。
ウィサの置かれた状況は、言葉以上に雄弁。プレシーズンマッチへの一切の出場なし、ノッティンガム・フォレストとの今季開幕戦もスカッド外。これらは偶然ではなく、移籍交渉が進行中であることを暗示する明確なサインだ。
ノッティンガム・フォレストも7月と1月の2度にわたってアプローチをかけているが、いずれも不発に終わっている。そうした中でのニューカッスルの4000万ポンドオファーは、これまでで最も本格的な挑戦状と位置づけられる。
個人的な見解
今回の移籍騒動で最も興味深いのは、ブレントフォードが見せている計算された頑固さ。フランク監督体制崩壊から主力選手の大量流出まで、クラブの屋台骨が根底から揺らいでいる状況で、ウィサという最後の砦を死守しようとする姿勢は理解できる。
4000万ポンドという大金を蹴ったのは、プレミアリーグ残留への危機感の表れに他ならない。しかし、選手本人の意志が固い以上、この膠着状態が長引けば長引くほど、全ての関係者にとって損失は拡大していく。
ニューカッスル側の選択肢も限られている。さらなる増額提示で勝負に出るか、それとも他のターゲット探しに舵を切るか。移籍ウィンドウのクロージングまで時間は少なく、決断は待ったなしだ。
個人的には、最終的にブレントフォードが折れて、4500万ポンド前後での決着になると予想している。ウィサの年齢とキャリアステージを考慮すれば、チャンピオンズリーグでプレーできる今回の機会を逃すのは得策ではない。