プレミアリーグ昇格を果たしたリーズ・ユナイテッドが、今夏の移籍市場で最も大胆な決断を下そうとしている。Sacha Tavolieri氏による最新報道で明らかになったのは、同クラブがレーシング・ストラスブールのウィンガー、ディラン・バクワ獲得に向けて約3500万ユーロの投資を覚悟したという事実だ。
🟡🏴 Leeds United now leading the race for Dilane Bakwa. #LUFC are now ready to meet Racing Strasbourg expectations which around €35M to make a deal happen. #NFFC has not left but the newly promoted are now ahead.
— Sacha Tavolieri (@sachatavolieri) August 23, 2025
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ノッティンガム・フォレストとの激しい獲得競争を制し、リーズが頭一つ抜け出したこの状況は、戦力補強の域を完全に超えている。ダニエル・ファルケ監督が描く戦術的青写真において、バクワという22歳のフランス系コンゴ民主共和国代表ウィンガーが担う役割は計り知れない。昨シーズンのリーグ・アンで6ゴール9アシストを記録した左利きの右ウィンガーは、リーズが血眼になって探していたピースそのものだ。
バクワ獲得でリーズの攻撃陣が完成形へ
ディラン・バクワの特徴を解き明かすと、現代サッカーに求められる多面性が鮮明に見えてくる。主戦場は右サイドだが左サイドでもプレー可能、さらには中央のクリエイティブミッドフィルダーや時にはストライカーまでこなす器用さを兼ね備えている。
身長180センチと決して大柄ではないものの、スピードとテクニックを武器にしたドリブル突破は見る者を圧倒し、昨シーズンのストラスブールでは攻撃の心臓部として君臨した。
特筆すべきは、バクワがイゴール・パイシャオンのマルセイユ移籍により急浮上した代替候補でありながら、実際にはパイシャオンとは正反対のタイプの選手である点だ。
ブラジル人ウィンガーが内側に切れ込むプレーを好むのに対し、バクワはサイドラインに張り付いてからの精度の高いクロス供給で勝負する。この違いこそが、ファルケ監督の戦術に全く新しい武器をもたらす。
リーズの現有戦力を考慮すると、ノア・オカフォーやドミニク・カルヴァート・ルウィンという新戦力を迎えた攻撃陣において、バクワの存在はサイドからの攻撃バリエーション向上に直結する。
3500万ユーロ投資の真意とファルケ監督の戦術構想
リーズがバクワに対して提示する3500万ユーロという金額は、2年前にストラスブールがボルドーから獲得した1000万ユーロの3.5倍に跳ね上がっている。
この劇的な市場価値上昇は、バクワが過去2シーズンでストラスブールにて66試合で11ゴール18アシストという数字を叩き出した成長の証拠だ。週給17,000ポンドという現在の給与水準から考えても、リーズが大幅な昇給を提示できる余地は十二分にある。
ファルケ監督の戦術的構想を読み解くと、バクワ獲得の狙いが手に取るように分かる。昨シーズンのチャンピオンシップ制覇時、リーズはサイド攻撃に大きく依存した戦術を展開していた。プレミアリーグという舞台では、より洗練されたサイド攻撃が要求される中、バクワの持つタッチライン際からの仕掛けと正確なクロス供給能力は、リーズの攻撃パターンに革命的な変化をもたらす。
さらに重要なのは、バクワがフランスU-21代表としての経験を積み、ヨーロッパの舞台でも通用する技術レベルを実証している点だ。ストラスブールのカンファレンスリーグ出場権獲得に貢献した実績は、プレミアリーグという最高峰リーグでの適応力の高さを表している。
ノッティンガム・フォレストが先行していた獲得競争において、リーズが逆転劇を演じた背景には、金額面での優位性だけでなく、ファルケ監督の魅力的な将来構想があったに違いない。
プレミアリーグ昇格初年度のリーズにとって、バクワ獲得は戦力補強の枠を遥かに超えた象徴的意味を担っている。3500万ユーロという投資額は、昇格組の常識を打ち破る野心的な姿勢の現れであり、長期的な競争力確保への重要な布石だ。
ファルケ監督のもとで再構築される攻撃陣において、バクワがどのような化学反応を起こすのか、その答えは移籍ウィンドウ終了まで残り僅かとなった今、間もなく明らかになる。
個人的な見解
個人として、このバクワ移籍には極めて興味深い側面が存在する。まず、リーズの投資戦略が昇格組の従来の慎重路線から大きく逸脱している点だ。通常、昇格組は残留確保を最優先に堅実な補強を進めるものだが、リーズは明らかに異なる道筋を選んでいる。これは49ersグループの資金力があってこそ実現可能な戦略であり、現代サッカーにおける資本の決定的重要性を改めて証明している。 さらに注目すべきは、バクワという選手の持つポテンシャルとリーズの戦術的ニーズが完璧に噛み合っている点。ファルケ監督は過去にボルシア・ドルトムント時代、若手選手の育成と戦術的フィットの両立に長けた手腕を発揮してきた。
バクワのような技術的に優れながらも戦術理解度の高い選手こそ、ファルケシステムが最も効果的に機能する人材だ。個人的には、この移籍が成立すれば、リーズの攻撃陣は一気に上位クラブと渡り合えるレベルに到達する可能性が高い。
3500万ユーロという投資額は決して安くないが、バクワの年齢と成長曲線を考慮すれば、長期的には極めて賢明な投資になるはずだ。