オールド・トラフォードの芝生に立つことさえ許されなかった8月18日の夜、ヤクブ・キヴィオルは自身のアーセナルでの立ち位置を痛切に理解した。ミケル・アルテタ監督がマンチェスター・ユナイテッド戦のスクワッドから彼の名前を除外した瞬間、25歳のポーランド代表ディフェンダーにとってエミレーツでの物語は事実上終焉を迎えた。
そして今、ポルトの情熱的なサポーターが埋め尽くすエスタディオ・ド・ドラガンが、彼の新たな舞台として現実味を帯びている。
ポルトガル紙『O Jogo』が報じたところによると、アーセナルとポルトは買取義務付きローン移籍について粗合意に達しており、今週日曜日に交渉が再開される予定。
ポルトは既に700万ユーロのローン料と2000万ユーロの買取義務を含む2700万ユーロのオファーを提示したが、アーセナル側は3500万ユーロの評価額を譲らずこれを拒否した。しかし、ポルトガルメディアは「強い希望」を抱いており、今後数日が決定的な期間になると伝えている。
キヴィオルにとって、2023年1月にスペツィアから2000万ポンドで加入して以来のエミレーツでの日々は、まさにフラストレーションの連続だった。
センターバックとレフトバックの両方でプレーできる貴重なユーティリティプレイヤーとして、プレミアリーグで50試合以上に出場し3ゴール5アシストの結果を残してきた。だが、ガブリエウ・マガリャンイスとウィリアム・サリバが築く鉄壁の守備ラインの前では、どれほどの才能も霞んで見えてしまう。
ドラガンが求める完璧なピース
給与負担の問題が交渉の最大の焦点となっており、ポルト側はアーセナルに一部負担を求めていることが、この取引の複雑さを物語っている。総額2300万ポンドを超える可能性がある契約構造について、両クラブは詳細を詰めている段階だ。
フランチェスコ・ファリオーリ監督率いるポルトにとって、チャンピオンズリーグでの戦いを前にした守備陣強化は急務であり、キヴィオルの多様性は戦術的に計り知れない価値を持つ。
ACミランも獲得競争に名乗りを上げているものの、キヴィオル自身がプレミアリーグを離れる意向を示しており、ポルトが最有力候補であると報じている。
来夏のワールドカップを控えた彼にとって、ポーランド代表での地位確立には継続的な出場機会が不可欠だ。エスタディオ・ド・ドラガンでのレギュラーポジション獲得は、単なるクラブレベルでの成功を超えた意味を持つ。
最新の報告では、キヴィオルがリーズ・ユナイテッド戦では代役として復帰予定であるものの、これは移籍交渉に影響を与えるものではない。むしろ、アルテタ監督による戦術的な判断が、この移籍劇の行方を左右する重要な要素となっている。クリスティアン・モスケラの獲得により、キヴィオルの立場はさらに厳しくなった現実がある。
9月1日の移籍期限まで残り一週間を切る中、エスタディオ・ド・ドラガンの情熱的な雰囲気が、この才能豊かなポーランド人ディフェンダーを真に開花させる舞台となるのか。ポルトでの新章が、キヴィオルのキャリアにとって決定的な転換点となる可能性は極めて高い。
個人的な見解
キヴィオルのポルト移籍については、全ての関係者にとって最適解に近い取引だと確信している。アーセナルの視点から見れば、彼は確かに便利で信頼できる選手だったが、ガブリエウとサリバの圧倒的なパフォーマンスの前では、どれほど優秀な選手でも控えに回らざるを得ない。
クリスティアン・モスケラの加入により、この状況はさらに複雑になった。2700万ユーロという金額は決して小さくないが、彼の真の価値を考慮すれば妥当な範囲だ。
ポルトという舞台は、キヴィオルの持つ可能性を最大限引き出す環境として理想的だ。プリメイラ・リーガは戦術的な奥深さと技術的な要求度の高さで知られ、彼のようなインテリジェントなディフェンダーには格好の成長の場となる。
また、チャンピオンズリーグという最高峰の舞台で継続的にプレーできる機会は、25歳という年齢を考慮すれば極めて重要だ。ポルトでレギュラーポジションを確立できれば、ポーランド代表での地位も盤石になり、来夏のワールドカップでの活躍も期待できる。この移籍が実現すれば、2年後には我々は全く異なる次元で活躍するキヴィオルを目撃することになるはずだ。