昨夏、涙を飲んでチェルシーを去り、イベリア半島で新章を刻み始めたコナー・ギャラガー。だが運命の歯車は、再び彼をロンドン南部へと引き寄せようとしている。クリスタル・パレスが、かつてのヒーローを呼び戻すべく、アトレティコ・マドリードとローン移籍について本格交渉に踏み切った。
英『the News Shopper』によれば、オリバー・グラスナー監督率いるパレスは、エベレチ・エゼのアーセナル移籍で生じた中盤の空白を埋めるため、ギャラガーの獲得に全力投球している。
この動きは戦術的補強の枠を大きく超える。2021-22シーズンにセルハースト・パークで魔法を見せた25歳のイングランド代表は、サポーターにとって忘れ得ぬ存在だからだ。
パレスはすでにディエゴ・シメオネ監督のクラブに接触し、ローン移籍の可能性を探っている。ギャラガー自身もセルハースト・パークへの復帰に前向きな姿勢を示しており、交渉は順調に進展する可能性が高い。
ギャラガーにとっての「第二の故郷」復帰の現実味
あの魔法の2021-22シーズンを振り返ってみよう。当時21歳だった彼は、パトリック・ビエラ監督の薫陶を受けながら39試合に出場し、8ゴール5アシストという輝かしい数字を刻んだ。この躍動的なパフォーマンスにより、彼はパレスのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝き、21歳以下のプレミアリーグ選手として最多のゴール・アシスト数を記録した。
英『Daily Telegraph』は当時の彼を「プレミアリーグで最もエネルギッシュな才能」と評価し、「ビエラ戦術の中核を担う存在」として、「ボックス・トゥ・ボックスの役割で水を得た魚のように躍動している」と絶賛していた。セルハースト・パークのピッチは、間違いなく彼の才能が最も開花した舞台だった。
現在のマドリードでの状況は、彼の能力を考えれば物足りない。2025-26シーズン開幕2戦でわずか67分の出場時間に留まっており、2026年ワールドカップ・イヤーを控えた彼にとって、コンスタントな出場機会の確保は死活問題だ。
昨シーズンはラ・リーガで32試合出場、3ゴール3アシストという着実な成績を残したものの、シメオネのタクティクスでは彼のダイナミズムが十分に発揮されていない。
パレスが描く戦略的青写真とギャラガー効果
パレスにとって、ギャラガーの復帰は複数の難題を一気に解決する特効薬。エゼという創造性の源泉を失った中盤に、即座に戦力となる熟練した選手を迎え入れることができる。ギャラガーは既にパレスのDNAとチームメイトを理解しており、適応に要する時間を最小限に抑えられる。
彼の汎用性も見逃せない武器だ。セントラルミッドフィールダーとして攻守のバランスを保ちながら、状況に応じてより前線のポジションでも機能する。現在急成長中のアダム・ウォートンとのデュオは、リーグでも指折りの中盤コンビネーションに発展する可能性を秘めている。
市場価値を4000万ユーロと評価しているが、実際の移籍金は5000万ユーロ程度とされている。ローン移籍であっても相応のコストが発生するが、パレスにとっては投資に見合う価値がある選手だ。
ただし、獲得競争は熾烈を極める。ニューカッスル・ユナイテッドとトッテナム・ホットスパーも同選手の獲得に強い関心を示している。両クラブともパレス以上の資金力を持ち、チャンピオンズリーグ出場権という魅力的なオファーを提示できる立場にある。
現在のパレスは、ヨーロッパ大会出場という大志を抱いており、そのためには実績豊富な選手の獲得が不可欠だ。ギャラガーはプレミアリーグ通算136試合出場、18ゴール13アシストという実績を誇り、イングランド代表でも22キャップを数える国際経験豊かな選手。
個人的な見解
私の見立てでは、このギャラガー復帰劇は現代サッカーにおける理想的な移籍パターンの典型例となる。選手は慣れ親しんだ環境で再出発を図ることができ、クラブは即戦力を手に入れられる。
何より重要なのは、選手とサポーターの間に既に築かれた深い絆の存在だ。昨今のサッカー界では純粋にビジネス的な判断で進められる移籍が大半を占める中、このような情緒的なつながりを持った移籍は極めて貴重だ。
ギャラガー個人のキャリア戦略という観点からも、この移籍は極めて合理的な判断といえる。アトレティコでの1シーズンで確実にステップアップを果たした彼が、プレミアリーグに舞い戻ってその成長を披露することは、2026年ワールドカップでのイングランド代表レギュラーポジション確保にとって最重要課題。
ガレス・サウスゲート後任のトーマス・トゥヘル監督にプレミアリーグという舞台でイングランド入りへのアピールをすることになる可能性は高いかもしれない。