ベンヤミン・シェシュコが8月9日にオールド・トラッフォードで正式にお披露目された瞬間、ラスムス・ホイルンドの運命の歯車は確実に動き始めた。
7370万ポンドという巨額投資で獲得されたスロベニア代表ストライカーの存在は、デンマーク代表エースがマンチェスター・ユナイテッドで完全に置き去りにされたことを意味している。そんな中、南イタリアから待望の救いの手が差し伸べられようとしている。
ルカクの負傷がもたらしたナポリの緊急事態
アントニオ・コンテ監督率いるナポリにとって、ロメル・ルカクの筋肉系負傷による3か月離脱は想定外の大打撃となった。チャンピオンズリーグとセリエA制覇という野心的な目標を掲げるパルテノペイにとって、攻撃の要を失うタイミングは最悪だった。ジャコモ・ラスパドーリのアトレティコ・マドリード移籍も重なり、コンテは新たな得点源確保を最優先課題に据えている。
そこで急浮上したのが、かつてベルガモで鮮烈な印象を残したホイルンドだった。信頼性の高いジャーナリスト、ベン・ジェイコブス氏によると、ナポリはマンチェスター・ユナイテッドとホイルンドの獲得を巡って詳細な交渉を重ねており、約4000万ポンド相当の条件付き買い取り義務付きローン契約が具体的に検討されている。
Napoli now in advanced talks with Manchester United over Rasmus Hojlund.
— Ben Jacobs (@JacobsBen) August 25, 2025
Loan with conditional obligation discussed worth almost £40m, with loan fee in addition.🇩🇰
🤝 @alex_crook pic.twitter.com/evbOuh0Xx2
ナポリとホイルンドの代理人との間で建設的な対話が継続されており、個人条件面での合意が成立すればマンチェスター・ユナイテッドも取引を前向きに進める構えを見せているという。22歳のストライカーにとって、セリエAでの成功体験を持つイタリア復帰は魅力的な選択肢となっている。
シェシュコ到着が決定的にした立場の変化
ホイルンドがオールド・トラッフォードで直面している現実は冷徹だった。2023年夏にアタランタから鳴り物入りで加入したストライカーは、77試合で23ゴール3アシストという数字を積み重ねてきた。数字上は一定の結果を残しているものの、プレミアリーグという厳しい舞台で期待されたインパクトは発揮できずにいた。
今シーズンの低迷ぶりは深刻で、32試合でわずか4ゴールという不振に陥り、連続14試合無得点という屈辱的な記録まで作ってしまった。
フィジカル面では決して劣らないものの、プレミアリーグ特有の激しいボディコンタクトに翻弄され、チームメートとの化学反応も思うように生まれなかった。ルベン・アモリム監督も当初は忍耐強く起用し続けたが、シェシュコの正式加入により方針転換を余儀なくされた。
ホイルンド本人もローン移籍の可能性を受け入れる姿勢を示しているが、重要な条件として買い取りオプションではなく義務付きを強く希望している。これは移籍先での長期的なコミットメントを求めるホイルンドの意志表示であり、ナポリサイドもこの要求に応じる方向で調整を進めている。
マンチェスター・ユナイテッドは、PSR(収益性・持続可能性規則)の制約から4000万ポンド以下での売却は会計上の損失として計上されるため、完全移籍を第一に望んでいる。しかし適切な条件が整えばローン契約も検討する余地があると伝えられており、今回の交渉がその条件を満たす可能性は高い。
個人的な見解
アタランタ時代の彼の躍動感あふれるプレーを目の当たりにした者として、イタリアの戦術的洗練度と試合のリズムが彼の本来の資質にはるかに適合していることは疑いない。プレミアリーグの力押し重視のアプローチでは、彼の持つ繊細な技術力や卓越した空間把握能力が十分に活かされることはなかった。
コンテという戦術的名将の下でプレーすることで、ホイルンドは真の意味でのセンターフォワードとしての完成形に近づく絶好の機会を手にする。
イタリア人指揮官の緻密な戦術指導と、ナポリの組織的かつ流動性に富んだ攻撃システムは、間違いなく彼の潜在能力を最大限まで引き出すはずだ。
マンチェスター・ユナイテッドでの苦い体験は彼にとってかけがえのない財産となり、より人間的にも選手としても成熟したストライカーとして南イタリアでの新たな物語を紡ぎ始めることができるだろう。