土曜日のホッフェンハイム戦後、涙を流しながらピッチを去ったピエロ・インカピエ。その涙の意味が、今や明確になった。エクアドル代表の23歳ディフェンダーは、アーセナル移籍への強烈な想いを胸に、バイエル・レヴァークーゼンでの最終章を迎えている。
ファブリツィオ・ロマーノ氏の報道によると、個人契約の合意はすでに完了しており、インカピエ自身がアーセナル行きを強く希望している状況だ。
🚨🔴⚪️ Piero Hincapié has said yes to Arsenal and personal terms have been agreed, long term deal ready!
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) August 26, 2025
Understand Hincapié favors #AFC and also seen as ideal signing by Arteta.
Arsenal prepare opening bid, likely loan + obligation to buy… with Kiwior to FC Porto, soon. 🔄👀 pic.twitter.com/sLouOyh4Jx
トッテナムは先手を打ってローン+買取義務の6000万ユーロ条項での獲得を提案したが、インカピエの心はすでにエミレーツスタジアムに向いていた。
エベレチ・エゼの移籍でも同じ構図が生まれ、またしてもアーセナルがライバルを出し抜く形となった。ミケル・アルテタ監督の描く戦術構想が、若きタレントたちにとっていかに魅力的かを物語っている。
アルテタの戦術眼が導くインカピエ獲得の必然性
アーセナルは6000万ユーロのリリース条項を回避し、より現実的な市場価格での交渉を模索している。この戦略は、今夏すでに2億7500万ポンド超の大型投資を行ったクラブの財政バランスを考慮したものだ。一方で、インカピエ側も4500万ユーロ程度での移籍を希望しており、双方の思惑が一致する可能性は高い。
ヤクブ・キヴィオールのポルト移籍が条件となっているこの取引だが、ポーランド代表ディフェンダーは出場機会を求めて移籍を希望している。2000万ユーロ超のローン+買取義務でポルトとの合意は間近とされ、この動きがインカピエ獲得の扉を開く鍵となる。オレクサンドル・ジンチェンコもフェネルバフチェなどからの関心を受けており、左サイドの大幅な人員刷新が現実味を帯びている。
インカピエの魅力は、その汎用性にこそ宿っている。レヴァークーゼンではシャビ・アロンソ監督の下で左センターバック、左サイドバック、さらには3バックシステムの一角として機能してきた。
昨シーズンのブンデスリーガでは約90%のパス成功率を誇り、デュエル勝率62%、1試合平均3.3回のボール奪取という数値が示すように、攻守両面での貢献度は抜群だ。現代サッカーに求められる多機能性を体現する選手として、アルテタ監督の戦術システムに完璧にフィットする。
左サイド刷新で見えるアーセナルのチーム作り
インカピエの獲得により、マイルズ・ルイス=スケリーを本来のミッドフィールドでより多く起用できるようになる。18歳の若手選手は今シーズン序盤から左サイドバックで貴重な経験を積んでいるが、彼の本来のポジションは中盤センター。インカピエが左サイドを固めることで、ルイス=スケリーの本来の才能をより適切なポジションで開花させられる。
レヴァークーゼンでの実績も申し分ない。2020年にCAタレレスから635万ユーロで加入後、166試合に出場し、昨シーズンのブンデスリーガ制覇では不可欠な存在だった。
個人的な見解
この移籍はアーセナルにとって戦術的にも財政的にも極めて賢明な判断だと考える。昨シーズンのプレミアリーグでガナーズが苦しんだ最大の要因は、左サイドでの守備的脆弱性だった。
ジンチェンコは確かに攻撃面では優秀だが、怪我の多さと守備時の不安定さが常につきまとっていた。インカピエの加入により、この構造的問題が根本的に解決される可能性は高い。
さらに注目すべきは、この移籍がプレミアリーグ全体の勢力図に与える影響だ。トッテナムとの争奪戦を制したことで、アーセナルは北ロンドンにおける優位性を改めて示した。
エゼ、そしてインカピエと立て続けにライバルから獲得ターゲットを奪い取る手腕は、クラブの求心力と魅力度の高さの裏返しと言える。
23歳のインカピエにとって、タイトル争いを続けるアーセナルでの成長機会は、他では得られない価値があったのだろう。