ルベン・アモリムがオールド・トラッフォードに降り立ってから9ヶ月。彼の戦術革命の裏で、思わぬ才能が置き去りにされている。コビー・メイヌーだ。
エリック・テン・ハフ前監督の信頼を勝ち取り、FAカップ決勝でマンチェスター・シティを沈黙させた決勝弾を放った20歳のイングランド代表MFが、今や移籍市場で最も熱い視線を浴びる存在となった。
英『TBR Football』が報じたところによると、ニューカッスル・ユナイテッドとアストン・ヴィラが水面下でメイヌー獲得に向けた本格的な動きを開始している。
アモリムの3-4-2-1に居場所を失った黄金世代の逸材
メイヌーが直面する現実は残酷そのもの。アモリムの採用する3-4-2-1フォーメーションでは、ブルーノ・フェルナンデス、カゼミーロ、メイソン・マウント、マヌエル・ウガルテが中盤の主力として君臨し、ストックポート出身の天才には出番が回ってこない。
今季開幕2戦のアーセナル戦(1-0敗戦)、フルハム戦(1-1ドロー)ではベンチを温め続け、アモリムが5枚すべての交代カードを切った終盤戦でも声がかからなかった。
この状況の深刻さは、メイヌーの圧倒的な個人能力を考慮すると一層際立つ。
『FBref』の統計データが示すように、彼の90分あたりドリブル成功率は欧州主要5リーグの同ポジション選手中90パーセンタイルという驚異的な数値を記録している。狭いスペースでの巧みなボール捌き、相手を置き去りにする瞬発的な加速力——これらの武器がアモリムの戦術体系では封印されているのが実情。
ポール・スコールズ氏は「トニー・クロースがドイツ代表で見せるような司令塔の役割を、メイヌーはイングランド代表で果たせる逸材」と評価していた。リオ・ファーディナンド氏に至っては、その洗練されたプレースタイルをクラレンス・セードルフと重ね合わせて絶賛していた。しかし、そんな才能がオールド・トラッフォードでは日の目を見ることがない。
6000万ポンド評価、完全移籍でのみ放出方針
マンチェスター・ユナイテッドはメイヌーの移籍金を約6000万ポンドと査定している。クラブ側の方針は明確で、レンタル移籍は一切受け付けず、完全移籍でのみ手放す構えだ。この強気な姿勢の背景には、メイヌーの将来性への絶対的な確信がある。
ニューカッスル・ユナイテッドのエディ・ハウ監督は、中盤の質的向上を最重要課題に掲げており、メイヌー獲得に向けて既にマンチェスター・ユナイテッド首脳陣との接触を開始している。セント・ジェームズ・パークでの新プロジェクトは、昨季のカラバオカップ制覇という成功体験を土台に、さらなる高みを目指している段階だ。
一方、アストン・ヴィラのウナイ・エメリ監督は若手育成の名手として知られ、メイヌーにとって理想的な成長環境を提供できる指導者の筆頭格だ。ヴィラパークではヨーロッパカップ戦への定期出場が約束され、中盤のクリエイティビティ向上が急務となっている現状とメイヌーのスキルセットは完璧にマッチする。
来夏のワールドカップを見据えたイングランド代表での立ち位置確保も、メイヌーにとって切迫した課題だ。定期的な出場機会なしには代表選出は困難で、キャリアの重要な分岐点に立たされている。
個人的な見解
この移籍騒動を見守りながら、私はマンチェスター・ユナイテッドの人材活用戦略に深い疑問を抱かざるを得ない。
FAカップ決勝でマンチェスター・シティを相手に決勝ゴールを決めた選手を、わずか数か月後にお荷物扱いするクラブ運営は、明らかに一貫性を欠いている。
アカデミー出身選手への敬意と育成への責任感が欠如した現状は、ファーガソン時代から受け継がれてきたユナイテッドのDNAを根底から揺るがしている。
メイヌーほどの逸材を手放すリスクを冒してまで、アモリムの戦術的固執を優先する判断は短絡的だ。優秀な監督なら、選手の特性に合わせてシステムを微調整するのが当然の采配だろう。
もしこの移籍が現実となれば、ユナイテッドは将来のイングランド代表中盤の核となる人材を競合他社に献上する愚行を犯すことになる。移籍期限まで残り4日間——オールド・トラッフォードの首脳陣には、冷静かつ長期的な視野での判断を強く望みたい。