マンチェスター・ユナイテッドが、移籍市場最終盤で狙った切り札は、スペインの首都で扉を閉ざされた。
ファブリツィオ・ロマーノ氏によると、ユナイテッドはアトレティコ・マドリードのイングランド代表MFコナー・ギャラガーに対し、ローン移籍での獲得を打診。しかし、アトレティコは即座に拒否し、完全移籍での売却のみを検討する姿勢を崩さなかった。1週間前にはクリスタル・パレスも同様の提案を行っていたが、こちらも同じ結末を迎えている。
🚨 Manchester United have had a loan proposal rejected by Atlético Madrid for Conor Gallagher.
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) September 4, 2025
United asked for Gallagher but no plans for Atléti to let him leave on loan.
Same answer was received by Crystal Palace one week ago.
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ギャラガーは2024年夏、チェルシーからアトレティコへ移籍。移籍金は約4,200万ユーロとされ、ディエゴ・シメオネ監督の下で中盤の強度を高める存在として期待された。しかし、2025-26シーズン開幕からここまでのラ・リーガ出場はわずか85分。開幕戦で先発したもののハーフタイムで交代し、その後は2試合連続で途中出場にとどまっている。
ユナイテッドの中盤再編とギャラガーの適性
ルベン・アモリム監督率いるユナイテッドは、今夏の移籍市場で複数のポジションを補強したが、中盤の構成には依然として不安が残る。カゼミーロは年齢的な負担が増し、マヌエル・ウガルテはプレミアリーグの強度に適応しきれていない。コビー・メイヌーは守備的MFとしての信頼を勝ち取れず、試合ごとのパフォーマンスに波がある。
ギャラガーは、こうした課題を解決できる可能性を秘めた存在。高い運動量とプレッシング能力、そしてセカンドラインからの飛び出しによる得点力は、アモリム監督が志向する前線からの圧力と連動性を高める要素となる。さらに、プレミアリーグで90試合以上の経験を持つことは、即戦力としての信頼性を裏付ける。
しかし、ユナイテッドは今夏の大型補強で資金を使い切っており、アトレティコが求める4,000万ユーロ前後の完全移籍には踏み切れなかった。ローン移籍での獲得を模索したが、アトレティコは買い取り義務を含めることを要求。ユナイテッドはこれを拒否し、交渉は決裂した。
アトレティコがローン移籍を拒む背景には、クラブの財務戦略と戦力維持の両面がある。短期的な放出ではチームの競争力を損ない、かつ高額な給与負担を軽減できないと判断。完全移籍での売却ならば、移籍金で投資を回収しつつ、給与総額の削減にもつながる。
また、シメオネ監督はギャラガーの戦術的適応力を評価しており、現時点での構想外とは見なしていない。ラ・リーガとチャンピオンズリーグの長丁場を戦う上で、ローテーション要員としての価値は高い。特に、ハイプレスと切り替えの速さを求める試合では、ギャラガーの特性が生きる場面があると考えている。
プレミア勢の動きと冬の移籍市場への影響
ギャラガーには、ユナイテッドとパレス以外にもエヴァートンやウェストハムなど複数のプレミアクラブが関心を示していた。パレスは2021-22シーズンにローンで在籍した際、8得点3アシストを記録した古巣であり、復帰を熱望。しかし、アトレティコの強硬姿勢に阻まれた。
このまま出場機会が限られれば、冬の移籍市場で再び動きがある可能性は高い。特に、アトレティコがチャンピオンズリーグのグループステージを突破できなかった場合、財務面での調整が必要となり、完全移籍での放出に踏み切る可能性がある。ユナイテッドにとっても、冬の市場は中盤再編のラストチャンスとなるかもしれない。
ギャラガーは、豊富な運動量とボール奪取能力を武器に、攻守両面で存在感を発揮するタイプ。セカンドラインからの飛び出しはタイミングが鋭く、相手守備陣の背後を突く動きで得点機を生み出す。守備面では、相手のビルドアップを阻害する位置取りと、ボール奪取後の素早い前進が特徴的だ。
ただし、アトレティコではポゼッション時の役割が限定的で、チェルシー時代のように自由に動き回る場面は少ない。シメオネ監督の戦術下では、守備ブロックの一部としての規律が求められ、攻撃面での持ち味を発揮しきれていない。この戦術的制約が、プレミア勢からの関心を高める一因となっている。
個人的な見解
今回の移籍交渉は、アトレティコの経営方針とユナイテッドの補強戦略の差が鮮明に表れた事例だ。アトレティコは短期的な戦力流出を避け、完全移籍での利益確保を優先。一方のユナイテッドは、財政的制約の中で即戦力を確保しようとしたが、条件面で折り合えなかった。
ギャラガーにとっては、今季前半戦での出場機会がキャリアの分岐点になる。もし現状が続けば、冬の移籍市場での動きは避けられないだろう。
プレミア復帰となれば、彼の持ち味である攻撃参加とハイプレスが再び輝く可能性は高い。ユナイテッドがその舞台を用意できるか、それとも別のクラブが手を挙げるのか。