ブラジル・パルメイラスに所属する19歳のセンターバック、ルイス・ベネデッティを巡って、アーセナルとバルセロナが水面下で激しい駆け引きを繰り広げている。
身長197cmの長身を誇る彼は、空中戦の支配力と冷静なビルドアップ能力を兼ね備え、今季ブラジル全国選手権でのパス成功率は93％、空中戦勝率は71％という驚異的な数字を記録している。守備面では1試合平均3.5回のボール回収と3.5回のクリアを記録し、既に国内リーグ屈指の存在感を放っている。
アーセナルはこの夏、クリスティアン・モスケラとピエロ・イカンピエを獲得し、センターバックの層を厚くした。しかし、イカンピエはローン加入であり、将来的な完全移籍が義務付けられているとはいえ、長期的な戦力構想の中でさらなる競争力を求めている。
ベネデッティは即戦力というよりも、数年後にプレミアリーグの強度に完全適応し、守備の柱となる可能性を秘めた投資対象となる。
一方、バルセロナは8月にイニゴ・マルティネスをアル・ナスルへ放出した後、左利きのセンターバックという希少なプロファイルを補強ポイントに設定している。
財政的制約から高額な即戦力獲得は難しく、低コストかつ将来性のある選手を求める中で、ベネデッティは理想的な候補と映っている。ラ・リーガでは登録枠の関係で若手選手を有利に起用できる可能性もあり、バルセロナにとっては戦術面と制度面の両方で魅力的な存在だ。
移籍市場での駆け引きとパルメイラスの決断
パルメイラスは近年、エステヴァン・ウィリアンやヴィトール・ヘイスといった逸材を欧州へ送り出してきた実績を持つ。ベネデッティもその系譜に連なる存在だが、契約は残り4年以上あり、クラブは最低でも1300万ポンドを要求しているとされる。
アーセナルは今夏、850万ポンドのオファーを提示したが、パルメイラスはこれを拒否。冬の移籍市場で再び交渉のテーブルにつく可能性が高い。
アーセナルの新スポーツディレクター、アンドレア・ベルタは、かつてエドゥ・ガスパールが築いたブラジル市場とのパイプを再び強化しようとしている。
ガブリエウ・マガリャンイス、ガブリエウ・マルティネッリ、ガブリエウ・ジェズスといった同胞の存在は、ベネデッティにとっても適応を容易にする要素となり得る。一方で、バルセロナは現有戦力のパフォーマンス次第で冬の補強方針を変える可能性があり、前半戦の成績がベネデッティ獲得の是非を左右するだろう2。
さらに、ギリシャのオリンピアコスもこの争奪戦に参戦している。欧州での経験を積ませるためにローン移籍を前提とした契約を提示する可能性もあり、パルメイラスにとっては選択肢が広がる一方で、交渉は複雑化している。
プレースタイルと将来性の評価
ベネデッティの最大の武器は、圧倒的なフィジカルと空中戦能力だ。セットプレーでは守備だけでなく攻撃面でも脅威となり、長身ながら足元の技術も高い。
後方からのロングパスでサイドチェンジを行い、相手のプレスを一気に無力化する場面も多い。ブラジル国内では既に「次世代の守備リーダー」として注目されており、欧州のスカウト陣もその成長曲線に期待を寄せている。
ただし、課題も存在する。ブラジル国内リーグと欧州トップリーグでは試合のテンポや戦術的要求が大きく異なり、特にプレミアリーグでは対人の強度と試合間隔の短さが選手の適応を試す。ラ・リーガではポジショニングやビルドアップの精度がより厳しく求められるため、バルセロナ移籍の場合は戦術理解度の向上が鍵となる。
2025年1月の移籍市場は、ベネデッティにとってキャリアの大きな分岐点となる。アーセナルが獲得に成功すれば、当面はローンで欧州経験を積ませる可能性が高い。
バルセロナの場合は、即戦力としてベンチ入りしながら徐々に出場機会を増やすシナリオが想定される。どちらの道を選んでも、19歳という年齢を考えれば成長の余地は計り知れない。
個人的な見解
ルイス・ベネデッティは、現時点で完成された選手ではない。しかし、彼の持つフィジカル的優位性と技術的ポテンシャルは、欧州トップクラブが長期的な視野で投資するに値する。
特に左利きのセンターバックという希少性は、戦術的柔軟性を求める現代サッカーにおいて極めて重要だ。アーセナルにとっては、将来の守備の核を先行投資で確保するチャンスであり、バルセロナにとっては財政的制約下での戦略的補強になり得る。
個人的には、彼がどちらのクラブに移籍しても、最初の1〜2年は適応期間として過ごすことになると見ている。
その間に欧州の試合強度や戦術要求に慣れれば、3年後にはリーグ屈指のセンターバックとして名を馳せる可能性が高い。冬の移籍市場は、彼のキャリアを大きく方向付ける舞台となるだろう。