イブラヒマ・コナテの名前が、アンフィールドの内外でこれほど熱を帯びて語られるのは久しぶりだ。26歳のフランス代表センターバックは、現行契約が残り1年となった今、リバプールとの延長交渉が難航している。
英『Football Insider』によれば、クラブは今夏の移籍市場が閉じた直後から交渉を再開する構えだが、選手側は週給20万ポンドという高額な条件を提示しており、クラブの提示額とは大きな隔たりがある。
この駆け引きの背景には、マルク・グエイの存在がある。リバプールは夏の最終盤、ニューカッスル・ユナイテッドからアレクサンデル・イサクを獲得する一方で、クリスタル・パレスの守備の柱であるグエイにも強い関心を示した。
最終的に3500万ポンドのオファーは拒否され、代役確保に失敗したパレスが放出を見送ったことで取引は成立しなかったが、冬の再挑戦は既定路線とみられている。
契約延長交渉の裏側とレアル・マドリードの影
アルネ・スロット監督はコナテを高く評価しており、現時点で放出を望んでいるわけではない。しかし、契約延長がまとまらなければ、1月が最後の売却機会となる。
レアル・マドリードはすでに水面下で動き、来夏のフリー獲得を視野に入れているとされる。アントニオ・リュディガーの年齢やエデル・ミリトンの負傷歴を考慮すれば、コナテのような即戦力CBは魅力的な補強候補だ。
リバプールは1月までに契約延長をまとめられなければ、移籍金を得るために放出に踏み切る可能性がある。これはクラブの財務戦略とも一致する。フリーでの流出は避けたい一方、グエイ獲得に再び動く場合、コナテの序列低下は避けられず、選手本人が移籍を選ぶ理由にもなり得る。
コナテは2021年にRBライプツィヒから加入し、空中戦の強さとスピードを武器にハイライン戦術を支えてきた。対人勝率の高さはプレミアリーグでも上位に入り、ビルドアップでも安定感を見せる。
しかし、負傷離脱が多く、シーズンを通してフル稼働できた年は少ない。クラブがグエイのような耐久性と安定感を兼ね備えたCBを求めるのは、こうした事情も影響している。
グエイはプレミアリーグでの経験が豊富で、読みの鋭さとポジショニングの正確さに定評がある。コナテが持つ爆発的なスピードやフィジカルとは異なるタイプだが、守備ライン全体の安定感を高める存在になり得る。
もし両者が同時に在籍すれば、戦術的な選択肢は大きく広がるが、現実的には高額な契約延長と大型補強を同時に成立させるのは難しい。
冬の移籍市場がもたらす分岐点
1月の移籍市場は、リバプールにとって複数の意味で重要になる。契約延長がまとまらなければ、コナテを売却して資金を確保し、グエイ獲得に充てるシナリオが現実味を帯びる。一方で、コナテが条件面で歩み寄れば、クラブは守備の中核を維持しながら将来の補強計画を練ることができる。
レアル・マドリードの動きも無視できない。彼らは過去にもダビド・アラバやアントニオ・リュディガーをフリーで獲得しており、契約満了間際の選手を狙う戦略を得意としている。コナテが契約延長を拒めば、レアルは即座に動き出すだろう。
コナテは現在の週給7万ポンドから大幅アップとなる20万ポンドを要求。クラブ側はパフォーマンスに応じたボーナスを重視する契約を提示しており、両者の条件は平行線をたどっている。この隔たりを埋められるかどうかが、今後数カ月の最大の焦点だ。
コナテ本人はリバプールでのプレーを望んでいるとされるが、選手としてのピークを迎える時期に、自らの価値を最大化したい思いもあるはずだ。クラブにとっても、財務的な健全性と戦力維持のバランスを取るのは容易ではない。
個人的な見解
コナテの去就は、リバプールの守備再編計画の核心に位置している。彼の持つフィジカルとスピードは、プレミアリーグのトップレベルでも希少な資質であり、代替は容易ではない。
グエイの加入が実現すれば守備の安定感は増すだろうが、コナテのような縦へのカバーリング能力を完全に補えるわけではない。
私の見立てでは、リバプールは契約延長を最優先すべきだ。グエイ獲得は将来的な布石として有効だが、現時点での守備の屋台骨を失うリスクは大きい。
理想は両者の共存だが、財務面や選手の意向を踏まえると現実的ではないかもしれない。1月の決断は、今季だけでなく数年先のリバプールの守備構造を形作る分岐点になる。