開幕からわずか160分。昨季、アトレティコ・マドリードで50試合に出場し、4得点6アシストを記録したコナー・ギャラガーが、2025-26シーズンは序盤から苦しい立場に追い込まれている。開幕戦で先発したもののハーフタイムで交代、その後は2試合連続で途中出場にとどまり、ピッチ上での存在感は大きく削がれた。
この変化の背景には、今夏に加入したジョニー・カルドーゾの台頭と、コケ、パブロ・バリオスといった既存戦力の安定感がある。
ディエゴ・シメオネ監督は依然としてギャラガーの戦術適応力を評価しているが、現状ではローテーション要員としての起用が中心だ。
出場機会減少の背景と戦術的制約
ギャラガーは2024年夏、チェルシーから移籍金約4,200万ユーロでアトレティコに加入。プレミアリーグで培った高い運動量とプレッシング能力を武器に、ラ・リーガのテンポにも素早く適応した。昨季は中盤の強度を高める存在として不可欠な役割を果たし、シメオネからも「若さ、エネルギー、強度、そしてシュート技術を兼ね備えた選手」と称賛された。
しかし今季は、戦術的なバランスの変化が彼の立場を揺るがしている。アトレティコはポゼッション志向を強め、ビルドアップ能力に優れた選手を優先的に起用。
ギャラガーは守備面での貢献度は高いものの、ボール保持時の展開力や創造性でコケやバリオスに劣ると見なされ、序列が下がった。さらに、カルドーゾの加入によって中盤の競争は激化。結果として、彼の攻撃参加の機会は大幅に減少している。
数字はその現実を突きつける。昨季の平均出場時間は1試合あたり78分だったが、今季はわずか28分。得点もアシストもゼロで、攻撃面でのインパクトを残せていない。守備デュエル勝率は依然として高水準だが、攻撃面での評価低下が出場機会減少の一因となっている。
この状況を受け、複数のプレミアリーグクラブが動きを見せた。マンチェスター・ユナイテッドは中盤の運動量不足を補う存在として、クリスタル・パレスは2021-22シーズンにローンで在籍した際の8得点3アシストを再現できる戦力として、ギャラガー獲得に関心を示した。エバートンやウェストハムも候補に名を連ねたが、いずれも今夏の移籍市場では成立に至らなかった。
ユナイテッドもパレスもローン移籍を希望したが、アトレティコは完全移籍での売却のみを検討。要求額は4,000万ユーロ前後とされ、資金を使い切ったユナイテッドは条件面で折り合えなかった。パレスも同様に、財務的な制約から完全移籍には踏み切れなかった。
アトレティコがローン移籍を拒む背景には、財務戦略と戦力維持の両面がある。短期的な放出ではチームの競争力を損ない、給与負担も軽減できない。
一方で、完全移籍なら移籍金で投資を回収し、給与総額の削減にもつながる。さらに、シメオネは長丁場のシーズンを戦う上で、ギャラガーのハイプレスと切り替えの速さを評価しており、構想外とは見なしていない。
冬の移籍市場がもたらす可能性
現状が続けば、冬の移籍市場で再び動きがある可能性は高い。特に、アトレティコがチャンピオンズリーグのグループステージを突破できなかった場合、財務面での調整が必要となり、完全移籍での放出に踏み切るシナリオも現実味を帯びる。ユナイテッドにとっても、冬は中盤再編のラストチャンスとなるかもしれない。
戦術的に見れば、ギャラガーは4-3-3や4-2-3-1のインテンシティ重視の中盤で真価を発揮するタイプ。相手陣内でのボール奪取からショートカウンターに繋げる動きは、プレミアの多くのクラブが求める要素と一致する。アトレティコでは守備的な役割が強調されすぎ、攻撃参加の機会が限られているが、プレミア復帰となれば再びゴール前に顔を出す姿が増えるだろう。
ギャラガーにとって、今季前半戦はキャリアの方向性を決定づける期間になる。もし出場機会が増えなければ、代表復帰の可能性は遠のき、プレミア復帰の道を模索せざるを得ない。逆に、限られた時間で決定的な結果を残せば、シメオネの信頼を取り戻し、アトレティコでの地位を再構築できる。
彼の強みは、豊富な運動量と攻守両面での献身性、そしてセカンドラインからの鋭い飛び出しだ。守備面では相手のビルドアップを阻害し、攻撃面では相手守備陣の背後を突く動きで得点機を生み出す。この特性は、プレミアのハイテンポな試合展開において大きな武器となる。
個人的な見解
ギャラガーの現状は、選手としての価値を再定義する局面にある。
アトレティコでの経験は戦術理解や守備面の成熟という意味で大きな財産だが、彼の本質は攻守両面でのエネルギーと前向きな推進力にある。
今のままでは、その魅力が十分に発揮されないままシーズンを終える危険がある。
もし冬にプレミア復帰の道が開けるなら、彼にとっては代表復帰とキャリア再加速のための最良の選択肢になるだろう。
特に、攻撃的な中盤を必要とするクラブであれば、ギャラガーは再び輝きを取り戻せるはずだ。逆にアトレティコに残る場合は、限られた出場時間で決定的な結果を残す覚悟が求められる。
この冬の決断が、彼のキャリアの未来を大きく左右することは間違いない。