ケナン・ユルディズはユベントスの未来を担う存在として、クラブとサポーターから絶大な信頼を寄せられている。9月16日に行われたチャンピオンズリーグのボルシア・ドルトムント戦では、アレッサンドロ・デル・ピエロが30年前に決めた伝説的なゴールを彷彿とさせる一撃を叩き込み、さらにアシストも記録した。
この試合は4-4の壮絶な打ち合いとなったが、ユルディズの存在感は際立ち、彼が単なる若手有望株ではなく、すでにチームの中心選手であることを証明した。
ユルディズは2022年にユベントスへ加入し、翌年にはトップチームに昇格。以降、公式戦88試合で18ゴール15アシストを記録している。今季もすでに4試合で2ゴール4アシストと、開幕から圧倒的なパフォーマンスを披露している。さらに6月に行われたFIFAクラブワールドカップでは3得点2アシストをマークし、世界の舞台でもその才能を示した。
ユベントスは2024年に彼へ背番号10を託し、クラブの象徴としての地位を与えた。そして現在、クラブは2030年までの長期契約延長を目指して交渉を進めており、年俸も大幅に引き上げられる見込みだ。
この契約は「アンチ・プレミアリーグ契約」とも呼ばれ、アーセナルやチェルシー、マンチェスター・ユナイテッドといった資金力豊富なクラブからの引き抜きを阻止する狙いがある。
プレミア勢の執念とユベントスの決意
アーセナルはレアンドロ・トロサールの将来が不透明なこともあり、攻撃陣の強化に向けた補強候補としてユルディズをリストアップしていると、イタリアメディア『Bianconera News』が伝えた。
チェルシーは今夏7000万ユーロのオファーを提示したが、ユベントスは即座に拒否。さらにマンチェスター・ユナイテッドもルベン・アモリム監督の戦術に適合する選手として関心を寄せていたが、クラブの姿勢は一貫している。ユルディズは「ユベントスで一生を過ごしたい」と語っており、現時点での移籍の可能性は極めて低い。
ユベントスは彼をチームの「顔」として据えるだけでなく、戦術的にも中心に据えている。イゴール・トゥドル監督はユルディズを攻撃の軸に据え、左サイドからのカットイン、トップ下での創造性、さらにはセカンドストライカーとしての決定力を最大限に活かしている。彼の万能性は、プレミア勢が喉から手が出るほど欲しがる理由そのものだ。
一方で、プレミアリーグのクラブにとってユルディズは「未来のバロンドール候補」とも評される存在であり、資金力を背景に再びアプローチを仕掛ける可能性は残されている。しかし、ユベントスは彼をクラブの象徴として守り抜く覚悟を固めており、少なくとも数年はトリノの地でプレーを続けることが濃厚だ。
ユルディズのプレースタイルと進化
ユルディズの最大の武器は、相手ディフェンスを切り裂く推進力と、ゴール前での冷静さだ。左サイドからのドリブル突破はもちろん、トップ下での視野の広さとラストパスの精度も高い。さらに、ゴール前での決定力は年々向上しており、今季の序盤戦でもその進化を証明している。
また、彼のプレーには「デル・ピエロの再来」と評される美しさがある。特にドルトムント戦でのゴールは、往年の名手を知るファンにとって感情を揺さぶる瞬間だった。
だが、ユルディズはただの模倣者ではない。彼は現代的なフィジカルとスピードを兼ね備え、守備面でも献身的に走る。クラシックな10番のエレガンスと、現代サッカーに求められる強度を融合させた存在なのだ。
個人的な見解
ケナン・ユルディズを巡る移籍報道は、プレミアリーグの資金力とセリエAの誇りがぶつかり合う象徴的なテーマだと感じる。
アーセナルやチェルシー、ユナイテッドが彼を欲しがるのは当然だ。20歳にしてこれだけの完成度を誇り、なおかつ成長の余地を残している選手は、クラブの未来を変える可能性を秘めている。
しかし、ユベントスが彼を「新たな顔」として据えようとする姿勢もまた揺るぎない。クラブが本気で彼を中心にチームを作り上げようとしている以上、現時点での移籍は現実味を欠く。
個人的には、ユルディズがユベントスに残ることは彼自身にとっても正しい選択だと思う。
プレミアリーグのスピードとフィジカルに挑戦する未来は必ず訪れるだろうが、今はセリエAで背番号10を背負い、クラブの象徴として経験を積むことが、彼をさらに大きな存在へと押し上げるはずだ。
数年後、成熟したユルディズがプレミアの舞台に立つとき、その価値は今の1億ユーロをも超えるだろう。