ユリアン・ブラントの去就はヨーロッパの移籍市場で最も注目を集めるテーマのひとつとなっている。29歳のドイツ代表MFは、ボルシア・ドルトムントとの契約が2026年夏で満了を迎える。
クラブとの延長交渉は進展しておらず、冬の移籍市場での売却、あるいは来夏のフリー移籍という二つのシナリオが現実味を帯びていると、英『CaughtOffside』が報じている。
今季のブラントは既に公式戦5試合に出場し1ゴールを記録。数字だけを見れば平凡に映るかもしれないが、彼の存在感は依然として際立っている。中盤から前線を自在に動き回り、狭いスペースでのボールキープや決定的なラストパスでチームに厚みを与えている。だが、ニコ・コヴァチ監督の下で序列が揺らぎ始めており、クラブが刷新を進める中で中心的役割を維持できるかは不透明だ。
この隙を突くように、アストン・ヴィラ、ニューカッスル・ユナイテッド、そしてトッテナム・ホットスパーが動きを見せている。いずれも攻撃の創造性を補強したいクラブであり、ブラントの多彩な能力は理想的なターゲットとなっている。
プレースタイルと戦術的価値、プレミアでの適応可能性
トップ下を本職としながらも、左右のウイング、セントラルMF、さらにはインサイドフォワードまでこなせる。昨季ブンデスリーガでは30試合に出場し5ゴール10アシストを記録。決定機創出数やドリブル成功数でも上位に位置し、攻撃の潤滑油としての役割を果たした。
プレミアリーグにおいても、彼のプレースタイルは十分に通用する。185cmの体格を活かしたフィジカル、相手守備を切り裂く縦パスの精度、そして試合のリズムを変える判断力。
これらは激しいプレスと速いトランジションが求められるイングランドの舞台でこそ輝きを増す。特にアストン・ヴィラのウナイ・エメリ監督が採用する4-2-3-1では、オリー・ワトキンスやモーガン・ロジャーズとの連携で新たな化学反応を生み出す可能性が高い。
ニューカッスルにとっては、今夏に獲得したニック・ウォルトメイドとのドイツ人コンビ結成が現実味を帯びる。トッテナムにとっては、ジェームズ・マディソンの長期離脱を埋める即戦力候補として、ブラントの存在は極めて魅力的だ。トーマス・フランク監督の下で、中央でもサイドでも機能できる彼の多様性は、スパーズの攻撃オプションを大きく広げるだろう。
移籍市場の駆け引きとクラブの思惑
ドルトムントのスポーツディレクター、ラース・リッケンは「契約延長の可能性もある」とコメントしているが、現実的にはクラブにとって最後の売却チャンスが迫っている。来夏にフリーで失うリスクを避けるため、今冬の移籍市場での売却は合理的な選択肢となる。
アストン・ヴィラは既にハーヴェイ・エリオットを獲得しているが、エミリアーノ・ブエンディアの放出を視野に入れており、ブラントを後継者とするプランを描いている。
ニューカッスルは即戦力よりも市場価値の高い選手を安価で確保する戦略を重視しており、ブラントはその条件に合致する。トッテナムは予算が限られる中で、契約状況を利用した“賢い補強”として彼をリストアップしている。
さらに、プレミアリーグのクラブにとってブラントの経験値は大きな魅力。チャンピオンズリーグでの豊富な実績、ドイツ代表としての国際舞台での経験は、若手主体のチームに安定感をもたらす。特にニューカッスルやヴィラのように、欧州カップ戦を戦いながらリーグ上位を狙うクラブにとって、彼の存在は戦術的にも精神的にも大きな支えとなる。
個人的な見解
ユリアン・ブラントの移籍話は、今冬の移籍市場を象徴するテーマになると確信している。
ドルトムントにとっては、彼を残すことで得られる戦術的安定と、売却による資金確保のどちらを優先するかという難題に直面している。
個人的には、プレミアリーグでのブラントを見てみたいという期待感が強い。特にエメリ監督の下で戦術的に磨かれたヴィラの攻撃陣に加われば、彼の創造性は一段と輝きを増すだろう。
一方で、ニューカッスルやトッテナムにとっても、ブラントは即戦力かつ市場価値の高い補強となる。
マディソン不在のスパーズで彼が中心的役割を担う姿は容易に想像できるし、ニューカッスルの野心的なプロジェクトにおいても、経験豊富なドイツ代表は重要なピースとなるはずだ。
いずれにせよ、この冬の移籍市場でブラントの去就は大きな注目を集めることになる。彼の選択が、プレミアリーグの勢力図を揺るがす可能性すら秘めている。
