ユベントスの中盤を支えてきたマヌエル・ロカテッリが、今冬の移籍市場でプレミアリーグ3クラブのターゲットとなっている。アストン・ヴィラ、ウェストハム・ユナイテッド、そしてウルヴァーハンプトン・ワンダラーズが、27歳のイタリア代表MF獲得に向けて本格的な動きを見せているのだ。
2021年にサッスオーロからユベントスへ加入したロカテッリは、当初ローン契約でスタートし、2023年に完全移籍が成立。現在までに公式戦200試合近くに出場し、6ゴール15アシストを記録している。だが、イゴール・トゥドール監督の下では中盤の序列が変化しつつあり、これまでスタメン出場続けているものの、ロカテッリは絶対的な立場から一歩後退している。
それでも彼の市場価値は依然として高く、プレミアリーグの複数クラブがその獲得に動いている。イタリアメディア『Tutto Juve』が伝えたところによれば、3クラブはすでに冬の移籍市場に向けてオファー準備を進めているという。
アストン・ヴィラが描くロカテッリの役割とは?
アストン・ヴィラがロカテッリに注目する背景には、ユリ・ティーレマンスの去就不安がある。ベルギー代表MFにはアトレティコ・マドリードなど複数クラブが関心を寄せており、ヴィラは中盤の守備的な選手層を厚くする必要に迫られている。
ウナイ・エメリ監督の戦術は、ボール保持とプレッシングの切り替えを重視するスタイル。ロカテッリのようにポジショニングに優れ、インターセプト能力が高く、展開力も持ち合わせた選手は、まさに理想的な補強ターゲットだ。彼のプレーは派手さこそないが、試合のリズムを整える“リズムメーカー”として機能する。
さらに、ロカテッリはイタリア代表としてEUROやネーションズリーグなど国際舞台での経験も豊富。ヴィラが目指す欧州大会進出に向けて、彼のような経験値の高い選手は、若手を牽引する存在としても価値がある。中盤の構成を再定義する上で、ロカテッリの加入は戦術的な幅を広げる選択肢となる。
ウェストハムが求める“知性と安定感”
ウェストハム・ユナイテッドもまた、ロカテッリに強い関心を示している。クラブはかつて中盤の核だったデクラン・ライスを失い、その後継者探しに苦戦している。現在はギド・ロドリゲスがその役割を担っているが、契約延長が不透明な状況であり、代替案としてロカテッリが浮上している。
フィジカルと戦術理解を兼ね備えたMFを必要としている。ロカテッリはその条件を満たすだけでなく、ボール奪取後の前進力や、味方との連携においても高い評価を得ている。彼のプレースタイルは、ライスほどの爆発力はないものの、ウェストハムの新たな顔になれる可能性を秘める。
また、ロカテッリは守備的MFとしてだけでなく、ダブルボランチやインサイドハーフとしてもプレー可能。ウェストハムが採用する4-2-3-1や3-4-2-1のシステムにおいて、彼の柔軟性は戦術的な選択肢を広げる要素となる。
ウルヴスの野心と現実的な課題
ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズもロカテッリ獲得に興味を示しているが、財政面や競争力の観点から、アストン・ヴィラやウェストハムに比べて分が悪いのは否定できない。それでも、中盤の再構築を進めるウルヴスにとって、ロカテッリのような戦術的に成熟した選手は魅力的な存在だ。
ウルヴスは現在、若手中心の構成で戦っており、経験値のある選手が不足している。ロカテッリが加入すれば、試合のテンポをコントロールできる“軸”が生まれ、若手の成長にも好影響を与えるだろう。
ただし、ロカテッリ自身が求めるのは、欧州大会への出場や安定した出場機会である可能性が高く、ウルヴスがその条件を満たせるかは疑問が残る。今シーズンはここまで不甲斐ないパフォーマンスを継続しており、ウェストハム同様にステップダウンになりかねない。
ロカテッリの選択が意味するもの
ロカテッリはユベントスとの契約を2028年まで残しているが、クラブは中盤の再編を進めており、テウン・クープマイナース獲得を優先する可能性も報じられている。そのため、ロカテッリは“放出候補”として扱われる可能性が高まっている。
彼の移籍先としてプレミアリーグが浮上するのは、フィジカルとテンポの速さが求められる環境で、自身のプレースタイルを進化させるチャンスでもある。セリエAで培った戦術眼と技術を武器に、よりダイナミックなリーグでの挑戦は、彼のキャリアに新たな刺激を与えるだろう。
また、プレミアリーグは中盤の選手にとって、戦術的な柔軟性とフィジカルの両立が求められる舞台。ロカテッリがその環境に適応できれば、代表復帰やさらなるステップアップも見えてくる。
個人的な見解
マヌエル・ロカテッリの移籍話は、複数クラブが具体的な動きを見せている段階に入っている。
ユベントスでの立場が揺らぐ中、彼のような戦術理解に優れたMFは、プレミアリーグの中堅クラブにとって理想的な補強対象だ。
特にアストン・ヴィラは、欧州大会を視野に入れたプロジェクトを進めており、ロカテッリの加入は中盤の質を一段と高める可能性がある。
彼の加入によって、ボール保持時の安定感や守備時の切り替えが向上し、チーム全体の戦術的完成度が高まるだろう。
一方で、ウェストハムはライス以来の中盤の核として迎えるには、戦術的な再設計が必要になる。ロカテッリはライスほどのダイナミズムはないが、より繊細で知的なプレーが持ち味だ。その違いを理解し、彼の良さを引き出す環境を整えられる。
はたして、三つ巴の様相を呈する争奪戦は、どのクラブに軍配が上がるのか。