ガブリエウ・ジェズスの未来はアーセナルではなく、母国ブラジルに近づいている。今夏にスポルティングからヴィクトル・ギェケレシュを獲得し、さらにエベレチ・エゼやノニ・マドゥエケといった攻撃陣を補強した。その結果、ジェズスの序列は大きく後退し、今冬の移籍市場での退団が現実味を帯びている。
ジェズスは2022年夏にマンチェスター・シティからアーセナルへ移籍し、加入当初は攻撃の中心として存在感を示した。プレミアリーグでの献身的な動きと柔軟なポジショニングは、ミケル・アルテタの戦術において重要な役割を果たした。
しかし、ひざの負傷やハムストリングのトラブルに繰り返し見舞われ、継続的に試合に出場することが難しくなった。特に2025年1月に負った左ひざ前十字じん帯損傷は、彼のキャリアに大きな影を落とした。
アーセナルは長らく「決定力不足」という課題を抱えてきたが、ギェケレシュの加入によってその穴を埋めることに成功した。ゴール前での冷静なフィニッシュとフィジカルの強さを兼ね備えたスウェーデン代表FWは、クラブにとって待望のストライカーであり、ジェズスの役割を奪う存在となった。
アルテタがギェケレシュを「14番」として重用する姿勢を見せる中で、ジェズスはベンチに座る時間が増え、かつての輝きは薄れつつある。
プレミア残留か、ブラジル復帰か 揺れる選択肢
ジェズスの去就を巡っては、プレミアリーグ残留とブラジル復帰の二つの道がある。ウェストハムとエヴァートンはストライカー不足を解消するために関心を示しているが、彼の週給26万5000ポンドという高額な給与が大きな障壁となっていると、英『the Daily Briefing』が報じた。
一方で、ブラジル復帰の可能性は日に日に高まっている。フラメンゴがレンタル移籍でのオファーを提示しており、アーセナル側も前向きに交渉を進めているという。
ジェズス自身も古巣パルメイラスへの復帰を熱望していたが、クラブの財政事情から実現には至らなかった。フラメンゴは南米屈指のビッグクラブであり、リオ・デ・ジャネイロの熱狂的なサポーターの前で再起を図るシナリオは、彼にとって魅力的な選択肢となるだろう。
ジェズスのキャリアを振り返れば、マンチェスター・シティ時代にはプレミアリーグ優勝やFAカップ制覇に貢献し、ブラジル代表としてもコパ・アメリカ2019で決勝ゴールを挙げるなど、輝かしい実績を残してきた。
しかし、アーセナルでの3年間は負傷と不完全燃焼の連続であり、彼の才能をフルに発揮する場は限られていた。今、28歳という円熟期を迎える彼にとって、出場機会を得られる環境への移籍は避けられない決断となっている。
個人的な見解
ガブリエウ・ジェズスのキャリアは、才能と不運が交錯する物語だ。
シティ時代の爆発力、ブラジル代表での決定的なゴール、そしてアーセナル加入直後の輝き。どれも彼がトップストライカーとしての資質を備えていることを示している。
しかし、アーセナルという舞台では、その資質を継続的に発揮することができなかった。理由は明確で、度重なる負傷とクラブが求める「フィニッシャー像」とのズレである。
アルテタが求めるのはゴール前で一撃必殺を決めるストライカーであり、流動的に動き回り味方を生かすジェズスのスタイルは必ずしもフィットしなかった。
それでも、彼のキャリアがここで終わるわけではない。むしろ28歳という年齢は、ストライカーとして円熟期を迎えるタイミングだ。
プレミアリーグ中堅クラブで再び主役の座を取り戻すのか、それとも母国ブラジルで情熱を燃やし直すのか。
どちらの選択肢を選んでも、ジェズスにはまだ大きな舞台で輝く可能性が残されている。2026年ワールドカップを見据えるなら、今冬の決断はキャリアのターニングポイントとなるだろう。
私自身は、彼が再びピッチで笑顔を取り戻し、ゴールネットを揺らす姿を見たいと強く願っている。