ユーロッパリーグのヘンク対レンジャーズ戦、VIP席にはプレミアリーグのスカウトたちが勢揃いしていた。彼らの視線の先にいたのは、ギリシャ代表MFコンスタンティノス・カレツァス。17歳とは思えぬ落ち着きと創造性を備えたこの若者は、今まさに欧州の注目を一身に集めている。
エヴァートンはこの逸材に対し、明確な意思を持って動き始めた。ベテランのサッカージャーナリストのアラン・ニクソン氏によれば、エヴァートンはリヴァプール、ニューカッスル、サンダーランド、ボーンマスと並び、カレツァス獲得に向けて本格的なスカウティングを実施。VIP待遇を用意し、彼のプレーを間近で確認したという。
カレツァスの才能は“ギリシャの魔術師”と呼ぶにふさわしいか?
カレツァスは、ベルギーのヘンクでプロキャリアをスタートさせ、すでに公式戦53試合に出場。3ゴール6アシストを記録しており、ギリシャ代表としても5試合で2得点を挙げている。数字だけ見れば控えめに映るかもしれないが、彼の真価はスタッツでは測れない。
彼の最大の武器は、狭いスペースでもボールを保持し、相手の守備網を切り裂くドリブルとパスセンス。右サイドからのカットイン、中央でのターン、そしてラストパスの精度は、すでに成熟したトッププレイヤーのそれに近い。アラン・ニクソン記者が“Greek God”と称したのも、単なる比喩ではなく、実際にピッチ上で神懸かり的なプレーを見せているからだ。
また、彼のプレーには“間”がある。ボールを持った瞬間に急がず、相手の動きを見極めてから最適な選択をする冷静さは、年齢を超えた知性の証だ。ウイングとしてもプレー可能な彼は、ポジションに縛られず、試合の流れに応じて柔軟に役割を変えることができる。これは現代サッカーにおいて極めて重要な資質だ。
エヴァートンの補強戦略とカレツァス獲得の意味
2025年夏、エヴァートンは『The Friedkin Group』の支援を受けて約1億1300万ポンドを投じた。キアナン・デューズベリー=ホールを2500万ポンド+アドオンで獲得し、チャーリー・アルカラスも1300万ポンドで完全移籍。さらに、ウイングにはタイラー・ディブリングを3500万ポンドで加えた。
一見すると、攻撃的MFとウイングのポジションは充実しているように見える。しかし、カレツァスへの関心は、単なるポジション補強ではない。これはクラブの未来を見据えた戦略的投資であり、育成と競争力の両立を目指す意思表示でもある。
特に注目すべきは、ドワイト・マクニールの去就。英『TEAMtalk』によれば、彼のパフォーマンス次第では1月の退団も視野に入っているという。その場合、ウイングの再編は急務となり、カレツァスの獲得は即戦力としても意味を持つ。
さらに、エヴァートンはチャンピオンズリーグ出場権を持たないが、それが逆に若手にとっては魅力となる可能性もある。リヴァプールやニューカッスルではベンチに甘んじるリスクがあるが、エヴァートンならば出場機会を得やすく、成長の場として理想的と言える。
アンガス・キニアCEOは「良い案件があれば動く」と語っており、カレツァスはまさにその“良い案件”に該当する。移籍金は2000万ポンド超と見られているが、『The Friedkin Group』の財政力を考えれば、十分に実現可能な範囲だ。
また、エヴァートンは今季、戦術面でも変化を見せている。デイヴィッド・モイーズ監督は、ポゼッションとカウンターのバランスを重視し、攻撃的MFの役割がより重要になっている。カレツァスのような選手が加われば、戦術の幅は一気に広がるだろう。
個人的な見解
カレツァスの獲得は、エヴァートンにとって“未来を切り拓く鍵”になり得る。
彼のような若手を迎えることで、クラブの育成方針が明確になり、ファンにとっても希望の象徴となる。プレミアリーグの中堅クラブが、才能に賭ける姿勢を見せることは、リーグ全体の競争力を高める意味でも価値がある。
もちろん、リヴァプールやニューカッスルとの競争は熾烈だ。だが、エヴァートンが本気で彼を迎え入れる準備があるならば、カレツァス自身のキャリアにとっても、より多くの出場機会と成長の場を得られる選択となるはず。
彼がどのクラブを選ぶかはまだ分からないが、エヴァートンがこのレースに本気で挑んでいることは、クラブの未来に対する強い意志の表れだ。
この冬、カレツァスの決断がどのような物語を紡ぐのか――その瞬間を、我々は見届ける準備をしておくべきだ。
