プレミアリーグで18試合無敗を誇るクリスタル・パレスが、ヨーロッパ中の注目を集める若き司令塔キース・スミットの獲得に本気で動いていると、英『The Daily Mail』が伝えた。
AZアルクマール所属の19歳MFは、昨夏のU19欧州選手権で大会MVPと得点王を獲得し、今季もすでにエールディビジで6試合に出場、1ゴール2アシストと着実に結果を残している。
スミットの名前が世界に轟いたのは、2023年のUEFAユースリーグでバルセロナ相手に決めた50ヤードのロングシュート。その一撃は、単なる話題作りではなく、彼の視野の広さ、判断力、そして大胆さを証明するものだった。
以来、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリード、バルセロナ、チェルシーといった欧州の名門がこぞってスカウトを派遣し、争奪戦は激化している。
“デ・ブライネ × デ・ヨング”の融合体
スミットのプレースタイルは、フレンキー・デ・ヨングの冷静なボール保持と、ケヴィン・デ・ブライネの縦への推進力を併せ持つ。中盤でのポジショニングは的確で、ボールを持てば一瞬で局面を変えるパスを供給できる。さらに、ミドルレンジからのシュート精度も高く、得点力も兼ね備えている。
昨季はAZでリーグ戦18試合に出場し、今季もすでに6試合で1ゴール2アシスト。数字以上に注目すべきは、彼が試合のテンポを操る能力だ。ボールを受ける位置、味方との連携、相手のプレスを剥がす技術。すべてが19歳とは思えない成熟度を示している。
また、スミットはメディアの取材に対し、自身の市場価値について「2500万ユーロ?いや、もっとだと思う」と笑顔で答えており、その自信と野心もまた、トップレベルで戦う資質を感じさせる。
パレスの野心…ウォートン退団を見据えた“未来の軸”探し
クリスタル・パレスがスミットに熱視線を送る背景には、アダム・ウォートンの退団が迫っているという事情がある。イングランド代表MFにはチェルシーやレアル・マドリードが関心を示しており、来夏の移籍が現実味を帯びてきた。クラブはその穴を埋める“未来の軸”として、スミットを理想的な後継者と見ている。
オリヴァー・グラスナー監督の下、パレスは今季プレミアリーグで3位につけ、ヨーロッパカンファレンスリーグでも好スタート。10月3日時点で公式戦18試合無敗という驚異的な成績を残しており、若手が成長する環境としては申し分ない。
さらに、11月6日にはAZがカンファレンスリーグでパレスと対戦予定。スミットがセリンハースト・パークのピッチに立つことで、クラブ関係者が直接その才能を目の当たりにする絶好の機会となる。この試合が、獲得交渉のターニングポイントになる可能性は高い。
かつては中堅クラブの域を出なかったパレスが、今やプレミアリーグでタイトル争いに絡むほどの力をつけている。グラスナー監督の戦術は、堅守速攻にとどまらず、ポゼッションとプレッシングを融合させた現代的なスタイル。その中で、スミットのような“ゲームを創る”タイプのMFは、まさに戦術の核となる存在だ。
クラブはスミットに対し、「名門でベンチに座るより、ここで主役になれ」という明確なキャリアパスを提示している。これは、若手にとって非常に魅力的な提案であり、実際に過去数年でパレスからステップアップした選手たちの成功例も後押しとなる。
もちろん、ユナイテッドやマドリードのようなブランド力には敵わない。しかし、出場機会、成長環境、戦術的なフィット感。これらを総合すれば、パレスは“育成型クラブ”から“野心的クラブ”へと変貌を遂げつつある。
個人的な見解
キース・スミットのような選手は、数字や肩書きだけでは語り尽くせない。彼のプレーには、観る者の感情を揺さぶる“物語性”がある。
50ヤードのゴールは、ただの偶然ではなく、彼の中にある大胆さと創造性が噴き出した瞬間だった。U19欧州選手権での活躍も、単なる結果ではなく、試合の流れを支配する存在感が際立っていた。
クリスタル・パレスがこの逸材に本気で手を伸ばすのは、クラブの変革期を象徴する動きだ。
無敗記録を更新し続ける今季のパレスは、もはや“ダークホース”ではなく、“挑戦者”としての風格を漂わせている。
スミットがこのプロジェクトに魅力を感じるかどうかは未知数だが、もし彼がセリンハースト・パークを選ぶなら、それはパレスにとって“歴史の転換点”になるだろう。
スミットの選択がどこであれ、彼のキャリアは間違いなく注目に値する。
そして、パレスがこのような野心的な動きを見せることで、プレミアリーグの勢力図にも新たな風が吹き込まれるかもしれない。今後の展開から目が離せない。
